第98話 勇者さんは〖勇者〗でオハナは〖魔物〗だもの
勇者を何とか抑え込んだオハナの一斉射撃、だけど花砲(両肩)の方は連射出来ないから再度撃てるようになるまで待たなきゃいけない。
背中から生えた蔓の方の花砲では微々たるダメージしか与えられてないっぽいけど、それでもプリムさんとバルシュッツたちの小休憩程度にはなってるから、無駄玉ではないと思っておこう。
「オハナさんの攻撃にも耐えるなんて…………勇者ってマジで化け物っすね」
遠くに見える白い輝きが失われないのを見て、カナきちが目を輝かせていた。
そしていそいそと魔力を高めていき、
「自分も勇者に一撃喰らわせてやるっすよ――――――ダークフォース!!」
出会ったときはMPが足りなくて使用出来なかった闇属性の上位攻撃魔法『ダークフォース』、今はMPの問題も解決してMPが満タンの状態であれば2発は撃てるようになっていた。
勇者の頭上から黒色の光が降り注ぐ、それは徐々に光を強めていって――――――それが最高潮に達したとき、一筋の雷となって勇者を直撃した。
それだけで終わりじゃない、勇者を中心としてドーム状に漆黒の闇が広がっていく、それは地面をメキメキと破砕しながら徐々に広がり――――――広がりきったところで爆発した。
その爆発の威力は凄まじく、山岳地帯に居たオハナたちの所にまで音と衝撃が遅れてやってきた。
これ近くに居たプリムさんたち大丈夫かな?
魔法に関しても味方のだったら当たらないはずだけど、衝撃波まで相殺してくれるのかな?
心配になって眷属の視覚を借りて平原地帯の様子を見てみると、7号は4号にがっちりと捕まって飛ばされないようにしていた。
プリムさんも4号に護られて無事だったことに安堵する。
バルシュッツたちはどうやら爆風に飛ばされてこの場から離脱しようと試みたみたいだけど、4号眷属たちにがっちりと取り押さえられていた。
この戦いが終わったら4号と4号眷属たちをたくさん誉めてあげよう。
それで肝心の勇者だけど――――――…………生きていた。
さすがに無傷とはいかなかったみたいで、聖剣の白い輝きは弱々しくなって勇者の装備していた鎧も所々砕けて血が滴っていた。
聖剣を地面に突き立てて立ち上がった勇者は、オハナたちの居るこちらをジッと見つめてきた。
一応勇者ビームを警戒しておくけど、今の勇者さんはそんな場合じゃないもんね?
偶然とはいえオハナが勇往騎士団を追加で三人捕縛しちゃったから、このまま戦闘が終われば捕虜交換の後〖勇者側〗は昨日までとは比較にならないくらい不利になる。
勇者さん的には厄介なオハナを真っ先に消したいところだろうけど、そうしてると〖七牙〗の三人には逃げられちゃうだろうね。
オハナが厄介だと思っていながらも、勇者さんはこれ以上自分たちの勢力を不利にしないためにも此処は七牙を一人でも多く討っておきたいと考えてるはず…………。
だけど七牙を片付けようにもプリムさんが回復するから、オハナを相手にするために力を温存した状態じゃ只々時間だけが浪費されていくっていう――――――。
そしてもうすぐイベント終了時刻が近付いてきていた。
悪いけどオハナは魔物だもの、利用させてもらった勇者さんがこのまま何も出来ず、何も成せず、諦めて戦闘が終わっても別に構わないって思ってる。
そしてぶっちゃけると、オハナはバルシュッツたちの安否なんて正直どうでもいい。
だって生きてる限りプリムさんは苦行のように生かし続けてくれますよ?
もし死んでしまった場合は捕縛されて、捕虜交換で戻ってきたときに魔王さんたちの前で大恥かくでしょうね?生き生きとした顔で活躍するテーリカさんが目に浮かぶ。
オハナとしてはどっちでも良いのです、あの三人が捕縛されたとしても十分魔物側に利がある戦功は立ててますから文句なんて言わせない。
「ハアァァァァァァッ――――――!!!!!!!!」
再び聖剣に白い輝きが宿る。
それは爆発的にその輝きを増していき、すぐにでも周囲を飲み込んでしまいそうな強い光だった。
…………やっぱり頑張っちゃうんだね?このまま終わってくれたら楽だったのに………………。
そして、今の勇者さんは一番ヤバい!!
そう直感してオハナが攻撃を再開しても、その輝きは衰えることなく。
カナきちもヤバいと感じたのか魔法を撃ち込むけれど、到達する前にあの光に搔き消されているようだった。
「いきますッ!!」
ホタルちゃんが満を持してビームを勇者さんに撃ったけど、それも――――――。
バシュゥゥゥゥゥ――――――!!!!!!
聖剣の輝きで拡散されてる!?
それは攪乱幕なの!?ビームコーティングなの!?
まだ〇・フィールドじゃなくて良かったと思うべきなの!?
そしてさっきから絵面が剣と魔法のファンタジー世界じゃないんだけど!?
そんなツッコミを脳内で処理しながら、オハナも〖貫通〗弾を含めた全ての攻撃も聖剣の輝きに焼かれて消滅していた。
こんな力があるならどうして最初から使わなかったの?
その疑問はすぐに解消された。
勇者さんの身体も聖剣の輝きに焼かれていたからだった。
多分勇者さんのHPを削って放つ類の大技、切り札――――――。
今や勇者さんの聖剣はその輝きから『白い光の大剣』のようになっていた。
4号に急いでプリムさんを連れてその場から離れるように指示を出す、バルシュッツたちは眼が眩んだのか、腰が抜けたのか、その場から微動だにしない――――――まるで聖剣の輝きに魅せられたかのようだった。
「オハナッ!見えているんだろう!今回は僕らの負けだ。だが〖七牙〗である彼ら三人だけは此処で捕縛させてもらう!!」
7号からの映像は白一色に染まり――――――。
勇者ローウィンが、〖七牙〗バルシュッツを捕縛しました。
勇者ローウィンが、〖七牙〗ハミルダを捕縛しました。
勇者ローウィンが、〖七牙〗トラゴースを捕縛しました。
・
・
・
イベント終了時刻となりました。
これにて〖第二回世界大戦〗を終了致します。
イベントフィールドより転移を開始…………。
皆さまお疲れさまでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます