魔物だもの
暑がりのナマケモノ
第1話 さようなら銃弾と鉄と血と油の世界、こんにちはファンタジーの世界
働いた給料のほとんどをギリギリまで切り詰めて課金していた俺こと
もう少し見続けていたらゲロ吐いていたかもしれない。
それくらい衝撃だった。
まさか、残高三千円しかなかったなんて――――――。
やべーよコレどうするよ?給料もらったはずなのに月もまたげねーよ。
まっ、なんとかなるか――――――実家暮らしだし。
「お前もうゲームの課金禁止な?」
「……………………………………………………はい」
我が家で最強の母の命には逆らえなかった。
成人して課金を親に止められる俺ってヤバくないか?
はい。ヤバいですね☆
というわけで、俺は殺伐とした世界から足を洗う事にした。
元々超絶テクを持ってたわけでもない、寧ろ腕前の無さを
それを所属していたクランに報告する事にした。
言うても三人しかいないクランだったんで報告も楽だ。
『俺もうこのゲーム辞めますわ』
『どうしてですか!?』
『辞めないでください!!』
二人揃って引き留めてくれるとは思わなくてちょっと嬉しかった。
あ、ヤベ、なんか泣けて来た………………。
『補充アイテムどうするんですか!?』
『銀さんの課金が我々の生命線だったのに!!』
あー、秒で涙も引っ込んだわコンチクショウ。
この二人は完全に俺に寄生してた。
こんな二人に貢いでると思うと、余計にやる気が失せた。
俺はそのまま何も言わずログアウトした。
グッバイ、銃弾と鉄と血と油の世界――――――。
そして暫くの間禁ゲー期間を経て、晴れて再びゲーム解禁のお許しが出た。
そして俺は今話題のフルダイブ型MMORPGに挑戦してみる事にした。
初期投資額は痛かったけど、それ以上の課金はしないのだから問題無し。
今度は毛色の全く違う剣と魔法のファンタジー世界だ。
このゲーム――――――オズワールドファンタジーはまずは勢力を選ぶ。
人間か、魔族か。
それによってステータスパラメーターが変化するようだ。
人間であれば装備が豊富で誰でもお手軽簡単に能力を上げられるそうだ。
対して魔族はまず魔物スタートで、そこから進化を続けて成り上がって行くらしい。
俺は迷わず魔族を選んだ。
どうしてかって?
課金アイテムも人間側は豊富だからだ。
誘惑を断ち切る意味で、俺は魔族を選ぶ!!
次に性別を選ぶんだが、此処でも俺は敢えて♀を選択した。
初めてのネカマプレイになる。
これなら寄生される心配も無いだろう、男に貢ぐ気になんてならないからな。
そしていよいよキャラメイキング――――――が始まるのかと思っていたら、次に種族の選択だ。
魔族側はその種類が豊富ではあるけれど、初期の段階で成れるのは〖ゴースト〗、〖スライム〗、〖チビウルフ〗、〖チビバット〗、〖チビクロウラ〗、〖マンドラゴラ〗、〖チビスネーク〗の計七種類。
そこから種族毎に設定されている進化条件を満たす事で、より強い種族へと進化していくようだ。
種族の特徴も中々面白い。(攻略サイト調べ)
例えばゴーストは物理攻撃無効、けれど聖属性魔法にはめっぽう弱く、ダメージ関係無く即死判定らしい。
スライムは物理攻撃耐性、でも魔法攻撃全般に弱い。
チビウルフ~などのチビ○○シリーズが一番人気があるらしい、ステータスが平均的に上がり、それぞれの種族の特徴を生かしたスキルを覚える。
最後にマンドラゴラだけど………………修羅の道としか書かれていなかった。
どういう事だ?
確かに能力的に総じて低いかもしれないけど――――――。
興味が湧いた俺はマンドラゴラを選択した。
名前を入力してくださいという画面が表示されたが、今まで”銀”でしか活動してこなかった。
♀だってことなら可愛らしい名前を付けてやりたくなるのが親心ってもんだが…………。
”オハナ”――――――。
すまねぇ…………俺のネーミングセンスの無さが憎いっ!!
そしていよいよキャラメイクか?と思ったら注意書きが表示されて、
”魔物は人型にならない限り、キャラメイキングは出来ませんのであしからず”
と、書いてあった。
まぁ俺は職人じゃないからな、今の勢いに任せてキャラを作ると大惨事になる。
その仕様は今の俺にはありがたかった。
こうして俺は未知なるファンタジーの世界にマンドラゴラのオハナとして生まれ落ちるのだった――――――。
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