第2話 夢ときのこ
夢を回っている。夢で回っている。夢が回っている。
俺はおそらく夢を見ているときに飲み込まれてしまったのだろう。何にって、噂にもなっているあの虚無のきのこに。
引きこもりすぎて部屋にきのこが生えてきたのには驚いたが、まさか寝ている間にそれに飲み込まれてしまうとは思いもしなかった。
寝ている間に飲み込まれたせいで夢がぐるぐる回るという奇妙なことになってしまっているのだろう。
なんてことのない夢だ。
■■が出てくる夢、尋ねていく夢、何かに寝過ごす夢、起きても起きても起きられない夢、寝過ぎていると怒られ指を指される夢、そんな夢が色々。
あまり見たい夢ではない。だけどループするより前から飽きるほど見ていた夢だし、毎晩見ていた夢でもあるので、ループしたところでそれはただ日が過ぎているだけ、ループしているのではなく一晩一晩は過ぎていて毎日同じ夢を見ているという解釈でもいいわけで、正直実感はあまりない。
ぐるぐる回る。飽きてはいるが、夢で正気を失っているので毎回律儀に焦ったり凹んだりしてしまう。
これが現実なら感情をなくしたり狂ったりしそうなものだが、毎回毎回新鮮な反応をしてしまう自分の正気のなさに呆れてしまう。なんて考えられるのも虚無の中でだけで、それじゃあ虚無の中なら俺は目が覚めているのかと考えるが虚無の中でも身体と頭の妙な軽さは続いているのでやはり寝ているのだろう。
夢なのか夢じゃないのか判別する方法は身体と頭が軽いか否かだ。
身体も頭も重ければ現実、身体も頭もふわふわしていたら夢。簡単なことだ、しかし夢の中でその判別法を思い出せることは少なく、毎回現実と思って反応してしまうから世話はない。
なんて考えている間にそろそろ虚無から出る、再びループが始まる。
何の目的でこんなことを?
まあ目的なんてないんだろうな。きのこはきのこで生きているだけ。何も考えず役割を遂行してるだけなんだろう。
たぶんそう。
だから俺もそうする。
何も考えず夢のループを続ける。
今も、次も、その次も回る、明日もない、明後日もない、昨日もない、そんな「今」が少しだけ幸せだなんて。
思ったことも忘れてしまうんだろうけど。
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