その存在。

行枝ローザ

第1話 ひとり。

「友達、いないの?」

「友達作らないの?」

うっせーな。


人はいつだって、誰と誰がツルんでいるかということを気にするらしい。

小さい頃は、母親が勝手に答えてくれた。

「ごめんねぇ。この子、ちょ~っと恥ずかしがり屋さんで」

「うぅん。なんか人見知りが激しいらしいのよ」

「大丈夫。ひとり遊びが好きな子だから」

いいじゃん、別に誰とも仲良くなくたって。


半日は必ず集団生活に縛られる歳になると、『先生』が無理やり『友達』の枠を作りたがった。

「は~い!みんなちゃんと仲良くしてねぇ!」

「隣の人と手を繋いでぇ」

「じゃあ、悪いけど、グループに入れてあげてね」

悪いけど、って何。


だからといってひとりを辞めることはなかった。

辞めなきゃいけない理由があったわけでもなかったし。

誰かが『遊ぼう』と言えば遊んだし、勝手に『友達』の輪に組み入れられたって別に拒否する理由がなかっただけだし。


こっちからはアクションしなかっただけ。


だからそんな『友達』は、小学校、中学校、高校、大学、就職、アルバイト先、結婚、引っ越し、いろんな理由で、糸が切れたように関係がなくなった。

なくなっただけ。


「友達いらないんですか?」

    

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