第17話 不思議な好意と託されたアイテム

 雫と朝食を食べ終えた私は、FFOにログインした。

 すると、そんな私を待ち構えるように、目の前にはココアちゃんの姿があった。


「あ、ココアちゃん、おはよう! 今日も早いね」


「お、おはよ、ベル」


 私が挨拶すると、ココアちゃんからはどこか気まずげな挨拶が返ってきた。

 どうしたんだろ? まあ、これまでも時々こんな感じになってたし、あまり気にしなくていいかな?


「ベル……エルダートレント、狩りに行くんだよね?」


「うん。だから今日は一緒に出来ないかも、ごめんね?」


「いい。それより、代わりにこれ持っていって」


「これ……?」


 首を傾げる私に送られて来たのは、トレード申請。中身を見てみれば、そこにはズラリと並ぶアイテムの数々が。

 回復用のポーションに、ステータスを一時的に増強する丸薬。更に……


「これって……新しい杖?」


 目についたそれを取り出してみると、それはアクアスノウとよく似た大きな杖だった。

 ただ、形が似ている一方で、色合いは真逆。夜闇のように黒く染まった木製の持ち手に加え、先端には大きな真紅の宝石が取り付けられている。



名称:大棍杖フレアナイト

種別:杖

装備制限:レベル12以上、ATK30以上

効果:INT+20、MP+100



 色だけじゃなく、性能の方も真逆だった。

 INTの上昇量が大きかったアクアスノウと違って、こっちはMPの上昇がメインになってる。


「ベル、杖の二刀流とかやってたから、二つあった方が良いかと思って。INTと違ってMPは装備してるだけで増えるし、《マナブレイカー》のためにMPタンクになるように作ったけど……どうかな?」


「うん、これなら左右でバランスも取れるし、すごくいいよ。ありがとう! でも、いいの?」


 アクアスノウや防具の時だって、写真撮影なんかでサービスして貰っちゃったのに、こんなにたくさん貰うなんて、さすがに悪い。

 そう思って問うと、ココアちゃんはゆっくり首を横に振った。


「いいの。そのアイテムも装備も、ベルと一緒にフィールドを散策して集めた素材で作ったし。お陰でお金も結構貯まった」


 なんでも、生産系のスキルはレベル上げには向かないけど、上手くやれば戦闘系よりずっと稼げるんだとか。

 だから、私に今渡した物を考慮しても元は取れてるとココアちゃんは語る。


「それに、その……ティアの記録を塗り替えられるのは、複雑だけど……ベルのことは、応援してるから」


 少し恥ずかしげに、そう言って頬を赤らめる。

 そんなココアちゃんが可愛くて、私は気付けばその体に抱き着いていた。


「ひゃっ、べ、ベル……!?」


「えへへ、本当にありがとう、ココアちゃん。私、ココアちゃんのことも好きだよ」


 一番はもちろん雫だけど、ココアちゃんのことも凄く好きだ。

 ぶっきらぼうなようで優しくて、ティアに頼まれただけなのに、私みたいな初心者にもすごく親切に色々教えてくれて……突っ走りがちな私を何度もフォローしてくれた。


 本当、雫以外に、こんなに人を好きになるなんて初めてだよ。ふふ、雫がいなかったら惚れてたかも……なーんてね?


「っ~~!? そ、そういうのいいから! 大体、人前でそんな、恥ずかしい……!」


「うん? ああ、そういえばそうだったね」


 すっかり忘れてたけど、ここはベースキャンプのログイン地点。当然、NPCだけじゃなくプレイヤーなんかもたくさんいて、私達のやり取りを微笑ましそうに見守っていた。


「ごめんごめん。それじゃあ、私行くよ。戻ったら何かお礼するから、して欲しいこととかあったら考えといて! 私に出来ることならなんでもするから!」


「か、かんたんになんでもとか言うな……!」


 顔を真っ赤にして慌てるココアちゃんを見てくすりと笑いながら、私は森林エリアに向かって走り出す。

 そんな私に、ココアちゃんはいつになく大きな声で叫んだ。


「こんなにサポートしてあげるの、今回だけだから! だから……一発で決めてよね」


「……ふふっ、もちろん!」


 この上ないくらいのエールを受けた私は、最後にぐっと親指を立てる。

 さて、それじゃあやってやりますか!!

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