クリエント騒動

マキシム

クリエント騒動

ここはクリエント王国、とある一室で二人の男女があることを話し合っていた


【アラン・クリエント】

「シズカ、すまないが婚約解消をしてほしい!」


【シズカ・アラフォード】

「それはなぜでしょうか、アラン殿下?」


クリエント王国の王太子であるアラン・クリエントは婚約者である公爵令嬢のシズカ・アラフォードに婚約解消を申し出たのである


【シズカ・アラフォード】

「とりあえず理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


【アラン・クリエント】

「うむ、実はある令嬢を妊娠させてしまったんだ!すまない!」


【シズカ・アラフォード】

「はああああああああ!」


シズカは思わず大声を出してしまった。次期国王と目されているアラン・クリエントが他の令嬢を妊娠させたのだから、これは大事である。ちなみにその令嬢の名はミリアナ・アンベルという男爵令嬢である


【アラン・クリエント】

いずれ、父上や母上にも知らせるつもりでいるが、私は責任を持って、子供を認知するつもりだ!」


アラン・クリエントは、妊娠させた責任を取る方向でその令嬢と結婚をするつもりのようである


【シズカ・アラフォード】

「分かりました。婚約解消の件を慎んでお受けいたします。」


【アラン・クリエント】

「そうか、よくぞ受けてくれた。もちろん、慰謝料も支払うから!」


【シズカ・クリエント】

「そうですか。では失礼します。」


シズカは席を立ち、部屋を退出した


【アラン・クリエント】

「ミリアナ、出ておいで!」


アランが呼び掛けると彼の想い人のミリアナ・アンベルが出てきた


【ミリアナ・アンベル】

「やりましたね、殿下!」


【アラン・クリエント】

「あぁ、これで私たちの禍根が立つことができた。」


【ミリアナ・アンベル】

「お腹の子も喜んでおります。」


【アラン・クリエント】

「父上も母上もきっとお喜びくださるであろう。世継ぎができたのだから!」


アランは愛しの人とその子供との夢の生活を妄想していたのである。一方、シズカはその足で国王の部屋に向かっていた。もちろんアランとの婚約解消及び浮気相手の妊娠の報告である。国王の部屋に到着すると部屋を警備している近衛隊長が近づいてきた


【近衛隊長】

「これはシズカ嬢、陛下に何用で参られた?」


【シズカ・アラフォード】

「ごきげんよう、近衛隊長殿。実は陛下に大至急、ご報告せねばならぬことがありまして。」


【近衛隊長】

「大至急、ご報告せねばならぬことにございますか?」


【シズカ・アラフォード】

「はい、殿下は私と婚約解消したいそうです。おまけに殿下の想い人を妊娠させたようです。」


【近衛隊長】

「えっ!」


近衛隊長はあまりの大事に驚愕した。そして共にいた近衛兵たちも同様である


【シズカ・アラフォード】

「だから大至急、陛下にご報告申し上げたいのです。」


【近衛隊長】

「はい!少々、お待ちくだされ!」


そういうと近衛隊長が陛下の部屋に入って、数分後・・・・


【近衛隊長】

「どうぞ、お入りくだされ!」


【シズカ・アラフォード】

「はい、失礼いたします。」


シズカは部屋に入ると、アラン殿下の父上と母上である国王と王妃とシズカの父である宰相が険しい表情でシズカを出迎えた


【ジグルド・クリエント】

「シズカ嬢、よう来てくれた。話は近衛隊長から聞いた。」


【アスカ・クリエント】

「シズカ、アランが誠にそのような事を申したのか!」


【シズカ・アラフォード】

「左様にございます、伯母上様。こうなっては婚約解消を受け入れざるおえません。」


王妃であるアスカ・クリエントの実家はアラフォード公爵家でありシズカ・アラフォードとは伯母・姪の間柄であり、嫡子であるアラン・クリエントとの婚約を推し進めた人物である


【ローランド・アラフォード】

「陛下、アラン殿下が婚約解消を申し出たのであれば、我等は慎んでお受けする所存にございます。」


【ジグルド・クリエント】

「あい分かった。」


【ローランド・アラフォード】

「姉上、何卒、ご理解のほどを。」


【アスカ・クリエント】

「くっ!」


アスカ・クリエント王妃は苦虫を噛み締めた表情を浮かべ、持っていた扇子を両手で折り曲げてしまった


【ローランド・アラフォード】

「恐れながら陛下、娘は傷心につき、我が公爵家の領地への帰還をお許しくださいませ。」


【ジグルド・クリエント】

「あい分かった。」


【ローランド・アラフォード】

「シズカ、お前は明日にでも領地へ帰還せよ。」


【シズカ・アラフォード】

「分かりました父上、では国王・王妃両陛下、失礼します。」


【ジグルド・クリエント】

「あい分かった。シズカ、この度はすまなかったな。」


【アスカ・クリエント】

「ごめんなさいね、シズカ。」


【シズカ・アラフォード】

「私も力及ばず、不出来な婚約者でございました。申し訳ありません。」


シズカは部屋を退出し、屋敷へ帰った後、入れ替わるようにアラン王太子と想い人のミリアナ男爵令嬢が尋ねてきた


【近衛隊長】

「殿下、何用で参られましたか?」


【アラン・クリエント】

「私の新しい婚約者を紹介するために決まっているではないか。」


【近衛隊長】

「申し訳ありませんが国王・王妃両陛下はお会いにはなりません。」


【アラン・クリエント】

「なぜだ!」


【近衛隊長】

「殿下、両陛下は殿下の所業に大変ご立腹でございます。特に王妃様は殿下の顔を見たくないと仰せになられました。」


【アラン・クリエント】

「は、母上が!」


【ミリアナ・アンベル】

「アラン殿下・・・・」


アランは両親の対面を諦め、途方に暮れていた


【アラン・クリエント】

「どうすればいいんだ。」


【ミリアナ・アンベル】

「殿下、私に妙案がございます!」


【アラン・クリエント】

「申せ!」


【ミリアナ・アンベル】

「お耳を拝借。」


ミリアナはアランの耳に妙案を授けた


【アラン・クリエント】

「ミリアナ、お前はそれでいいのか!」


【ミリアナ・アンベル】

「はい、きっと両陛下が怒っているのはシズカ様を勝手に婚約解消したことでしょう。シズカ様と寄りを戻せばきっと両陛下のご機嫌も治るはずです!」


【アラン・クリエント】

「おお、私の愛しの人よ!お前は私の事をそこまで考えてくれたのか!ミリアナ、必ずお前を幸せにするよ!」


【ミリアナ・アンベル】

「アラン殿下!」


二人が愛を確かめ合っていたころ、シズカは領地へ帰るための荷物の整理をしていた。すると爺やが尋ねてきた


【爺や】

「お嬢様、少しよろしいでしょうか?」


【シズカ・アラフォード】

「何かしら?爺や。」


【爺や】

「実はアラン殿下と見知らぬ令嬢がお嬢様と御対面したいと申しておりますが、いかがいたしますか?」


殿下は何用で来たのかしら?それに見知らぬって、まさか殿下の想い人か?既に婚約解消はなったから会う理由がありませんでした


【シズカ・アラフォード】

「もはや殿下との婚約は解消いたしました。会う理由がありませんので、追い返してください。」


【爺や】

「畏まりました。」


屋敷の外では、アラン・クリエントと想い人のミリアナ・アンベルが手ぐすねを引いて、待っていた


【爺や】

「お待たせいたしました。お嬢様はお気分が優れないのでお会いにはなられません。どうかお引き取りを。」


【アラン・クリエント】

「いや、どうしてもシズカに会わねばならぬのだ!」


【ミリアナ・アンベル】

「どうか会わせてください!」


【爺や】

「既に婚約解消がなりましたので、当家が殿下を迎える理由がございません。どうかお引き取りを。」


【アラン・クリエント】

「婚約の解消は取り消す。だからシズカに会わせてくれ!」


【ミリアナ・アンベル】

「そうですよ!殿下の命なのです!」


【ローランド・アラフォード】

「何をなされているのですか殿下?」


仕事が終わり帰宅したローランド・アラフォードは目の前にいるアラン・クリエントに尋ねた


【アラン・クリエント】

「おお!ちょうど良かった!宰相、父上と母上がお会いになられぬのだ。きっと勝手に婚約を解消したことを怒っているのだろう。だからシズカに会って婚約解消をなかったことにしてもらおうと・・・・」


【ローランド・アラフォード】

「殿下、貴方と娘はもう婚約は解消されました。もはや当家とは関わりがありませんので、どうかお引き取りを。」


【アラン・クリエント】

「ちょっと待ってくれ。私に名案があるんだ!もし私が国王になった暁にはシズカを正妃、ミリアナを側妃に迎え、ミリアナが生んだ子供はシズカの養子に迎えたいと思う!」


【ローランド・アラフォード】

「殿下、それは誰の入れ知恵にございますか?まさか、そこにいる小娘に焚き付けられたのですか?」


【ミリアナ・アンベル】

「そんな、宰相様、ひどい!」


【アラン・クリエント】

「無礼だぞ!私の子を身籠ったミリアナに対して今の発言は許されんぞ!」


【ローランド・アラフォード】

「無礼なのは殿下たちの方です。なぜ父親が誰かも分からない子供をシズカの養子に迎えねばならないのですか?」


ローランド宰相の発言に空気が変わった


【アラン・クリエント】

「父親が誰かも分からない子供、どういうことだ!」


【ローランド・アラフォード】

「お言葉の通りです。そこにおられるミリアナ・アンベル男爵令嬢は殿下の他に、不特定多数の令息と男女の関係を結ばれております。」


【ミリアナ・アンベル】

「えっ、何のことでしょう?」


【ローランド・アラフォード】

「いずれ分かることだ。さて殿下、城の迎えが来ております。さぁ、お引き取りを。」


そこへ城より迎えの馬車と護衛の兵士たちが到着した


【ローランド・アラフォード】

「殿下とその娘を連れていけ!抵抗すれば力づくでも、かまわぬ!」


【親衛隊長】

「御意!」


親衛隊はアラン殿下とアラン殿下の想い人を馬車に無理矢理、押し込もうとした


【アラン・クリエント】

「まて、私は王太子だぞ!離さぬか!」


【ミリアナ・アンベル】

「離しなさい!私は次期王妃ですよ!」


二人は抵抗したが多勢に無勢、馬車に押し込まれ、そのまま城へと帰還した。その後二人は、国王の命で幽閉された。そのころ、国王と王妃はアランの想い人のミリアナ・アンベルの男性遍歴の結果を聞いていた


【近衛隊長】

「ミリアナ・アンベル男爵令嬢と交際していた令息は各家の侯爵、伯爵、子爵、男爵等の跡継ぎと分かりました。時期を合わせれば、その中の1人の可能性があり、残念ながら王太子殿下の子供の可能性は極めて薄うございます。」


【ジグルド・クリエント】

「そうか、アランに近づいたのは、やはり次期王妃の座か。」


【アスカ・クリエント】

「くっ、忌ま忌ましい!」


国王と王妃は息子に近づく溝鼠に嫌悪感を抱き、どう処分するか考えた


【ジグルド・クリエント】

「まずはアランだ、あやつは国王の勅命を軽んじ、既に婚約者がありながら、他の令嬢と関係を結び、あまつさえ婚約解消までしおった!あやつは王族に相応しくない!」


【アスカ・クリエント】

「陛下!あやつは我等の願いをいとも簡単に潰してくれました!もはや死罪は軽うございます!王宮育ちのアランには生きながらにして地獄を見せてやりたいですわ!」


王妃は息子の独断で、全てが水の泡になったことに激怒した。息子とはきっぱりと絶縁し、生き地獄を味あわせたいという思いが心を支配していた


【ジグルド・クリエント】

「そうだな。アランはミリアナと婚約の上、王太子の座を剥奪、平民に降格の上、国外追放処分とする。我がクリエント王国に一歩でも踏み込めば、死罪とする!続いてミリアナ・アンベル男爵令嬢は、アランと婚約を結んだ上で平民に降格の上、国外追放処分とする!これも同様に我がクリエント王国に一歩でも踏み込めば、死罪とする!」


※アラン・クリエント

「ミリアナ・アンベルと婚約、王太子剥奪、平民に降格、国外追放、クリエント王国に侵入すれば死罪」


※ミリアナ・アンベル

「アラン・クリエントと婚約、平民に降格、国外追放、クリエント王国に侵入すれば死罪」


【ジグルド・クリエント】

「続いてミリアナ・アンベルと交際していた令息と各家の処分を伝える!まず各家の令息は平民に降格の上、修道院行きとする!そして各家は息子の不始末につき、侯爵から伯爵位の家は男爵位へと降格、子爵から男爵位の家は平民に降格の上、家は断絶とする!」


・各家の令息

「平民に降格、修道院へ護送」


・各家の貴族


※侯爵家「男爵位に降格」


※伯爵家「男爵位に降格」


※子爵家「平民に降格、御家断絶」


※男爵家「平民に降格、御家断絶」


【ジグルド・クリエント】

「最後に王太子の座は第二王子のレオン・クリエントが継承する」


※レオン・クリエント(10歳)

【ジグルドとアスカの息子でアランの実弟で第二王子】


「王太子の座を継承、次期国王」


【ジグルド・クリエント】

「以上の事を勅命として発する!」


国王はクリエント王国中に勅命として伝えた!各家の貴族は息子の不始末により、男爵に降格され、平民に降格され、中には自殺した元貴族も多数、続出した。ちなみにミリアナ・アンベルの実家は父親と母親は首を吊り、そのまま息絶え、もはや帰る場所すらなかったのである。場所を移し、ここはクリエント王国国境では・・・・


【国境兵士】

「とっとと出ていけ!疫病神ども!」


国境兵士により、元王太子のアランと元男爵令嬢のミリアナが一文無しのままボロボロの平民の服装で追い出されたのである


【アラン・クリエント→アラン】

「くっ、何でこんなことに!」


【ミリアナ・アンベル→ミリアナ】

「ちょっとどうするのよ!一文無しで追い出されたのよ!」


【アラン】

「黙れ!黙れ!黙れ!お前のせいでこうなったんだぞ!お前と関わらなかったら俺は次期国王だったのに!」


【ミリアナ】

「何よ!あんたなんか王太子しか取り柄のない、ただのポンコツじゃない!どうすんのよ!腹の子供とどう生活するのよ!」


【アラン】

「喧しい!お前のような淫売な奴は体でも売って、金を稼いでこい!腹のガキなんか、どうでもいい!」


【ミリアナ】

「何ですって!」


【アラン】

「俺は王太子だぞ!お前は俺のために働けばそれでいいんだ!ガキなんか堕胎するか、そこらへんに捨てろ!」


【ミリアナ】

「元王太子じゃない!最低!あんたなんかと結婚しなきゃ良かった!」


【アラン】

「黙れ!腹のガキの父親が俺じゃないと知ったら、お前と結婚なんかしなかった!」


【ミリアナ】

「ふん、どっちにしろ、あんたに男としての魅力なんかないのよ!」


【アラン】

「何?」


【ミリアナ】

「そうじゃない!シズカがあんたの婚約解消をあっさり受け入れたのも、あんたに男としての魅力はこれっぽちもなかったということじゃない!」


【アラン】

「何だと!」


【ミリアナ】

「何、怒ったのかしら?所詮、あんたなんかその程度の男なのよ!私と交際していた令息たちの方が大分増しだったわ!」


【アラン】

「きっさまあああああああ!」


アランはミリアナに体当たりし組伏せた。そしてミリアナの首を絞め始めた


【ミリアナ】

「くっ、くるじい。や、やめ。」


【アラン】

「死ねぃ、死んでしまえ!」


アランはそのままミリアナの首を絞め、そしてミリアナは息絶えた


【アラン】

「はぁ、はぁ、思い知ったか!はぁ、はぁ、はっ!」


我に帰ったアランは慌てふためいた。アラン自身は殺すつもりはなく、ただ腹立ち紛れで行ったことにアランは・・・・


【アラン】

「おっ、お前が悪いんだぞ!俺を怒らせたんだから!俺は悪くない!」


アランはミリアナを深い谷底に落とした


【アラン】

「俺は平民の如く溝鼠のまま一生を終わらせたくない!見てろよ!」


アランはクリエント王国を睨み付け、そのまま姿を消した。そして場所が変わり、ここはアラフォード公爵家の領地、シズカ・アラフォードは故郷の地にてのんびりと暮らしていた


【シズカ・アラフォード】

「うーん、やっぱり故郷はいいわ!誰にも邪魔はされないし、のんびりできるし!」


シズカは故郷の地にてのびのびと暮らし、魚釣りをしたり、平野を駆け回ったり等、アランの婚約者時代からできなかった事を目一杯楽しんでいるのである


【シズカ・アラフォード】

「うーん、このまま故郷でのんびりと暮らせたらなぁ~。」


シズカは雲を眺めながら、座っていると、怪しき影がシズカを眺めていた


【アラン】

「見つけたよ、愛しの人よ。」


そう国外追放になったアランは密かに抜け穴を掘り、国境へ侵入し、やっとの思いでアラフォード公爵家の領地に着いたのである。目的はシズカと既成事実を結ぶこと、既成事実さえ結べば、次期公爵の座は自ずと手に入る


【アラン】

「もはや次期国王は無理でも、次期公爵の座は狙える。シズカが俺の子供を孕めば!」


アランは鼻息を荒くし、アランの息子は怒張し、目と鼻の先にいるかつての婚約者であるシズカに狙いを定め、レイプしようと近づこうとしたら、アランの脳天に何かが深く刺さった


【アラン】

「がはっ。」


アランの脳天に矢が刺さり、そのまま絶命した。シズカを守っている隠密たちがアランを見つけ、密かに始末した。実はアランが抜け穴を使って国境に侵入したことを知った国王は予定通り死罪にすることを決めた。そしてアランがシズカに近づこうとした瞬間、公爵家の隠密の手によって暗殺された


アランの亡骸はシズカの目の届かない場所へと運び、その筋の商売に売られたのである。これがクリエント王国の歴史に残る御家騒動【クリエント騒動】は幕を静かに閉じられたのである

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クリエント騒動 マキシム @maxim2020

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