レイン・レイド

春嵐

01 レイン(練習用脚本)

 ぴちゃぴちゃ。


 雨の音。


 液体が、擦れる。


 わたしが声を動かせば、戦いが起こる。


 雨のなかに、わたしはいる。


 わたしが声をかければ、彼はわたしの肩を抱く。愛の言葉をささやく。ふたりのあいだに流れる時間が止まる。


 雨の音はノイズのように、わたしの回りでうごめく。


 声。目の前を通ったと思えば、すぐに後ろからすり抜けていく。多くの人間が周りにいるけど、わたしの回りにはだれもいない。


 手が。


 脚が。


 使えなくても。


 声ひとつで、すべては変わる。


 わたしの声で雨を降らせる。わたしの声で華を咲かせる。


 生きる。ただひたすらに、今日、この日のために、生きる。雨を受け入れて、濡れながら声を紡ぐ。わたしの回りにはだれもいない。わたしは、まだ、ひとりきり。


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