「烈風真田幸村戦記(大助編)」17

     四


 一番西の、セネガル、から始めて、ガンビア、ギニア・ビザウ、ギニア、シエラレオネ、リベリア、コートジボアール、ブルキナファソ、ガーナ、トーゴ、ベナン、ナイジェリア、カメルーン、赤道ギニア、ガボン、コンゴ、アンゴラ、ナミビア、南アフリカ、レソト、スワジランドと、一気に二十二の国を獲った。

二十二の国は、全く無抵抗で、一週間もしない間に恭順した。

すかさず、これらの国の外側に、二重式の二十間幅の長城を造っていった。

例によって砲台、トーチカを随所に造っていった。

そして、二十二の国の国境を高いコンクリートの壁を造って、二、三個所の関門を造った。

全住民に木製の手形を造って配り、これがなければ、夜は関門を通行出来ないようにした。

手形がないと、食料の配給も受けられないようにしたので、全員が手形を受け取りにきた。

手形がないと、仕事も貰えないので、金にもならなくなった。

手形には、氏名、住所、種族、村名、家族の人数、妻の人数も書き込まれた。

そして、紛争の経験数も書き込まれた。

紛争の理由も書かれた。

 これだけの個人情報は、役所代わりの鳳国軍役所の台帳にもかきこまれた。

台帳には、身長、体重、身体的特徴まで書き込まれた。

これは、老人、女、子供に至るまで持たされた。

手形がないと、学校にも行けないし、成人は、鳳軍の入隊試験さえ受けられなかった。

手形を紛失すると、再発行には、二名の推薦人が必要になった。

汚したり、毀損すると、罰金をとられた。

 これで、一応の国勢調査と人口調査が出来た。

反社会的な事をすると、手形に印が付けられて、行為の罪の重さで、留置所に入れられた。

 これで、アフリカの西海岸の国々は、完全に、鳳国の支配下になった。

兵士を従来の兵士も含めて、徹底的に試験をして、合格の数を厳しくした。

試験は半年に一回にした。

一度入隊しても、素行の悪い者や業績の悪い者は、除隊させた。

除隊させられた者は、三年間は、試験が受けられなかった。

こうした者は、農、鉱、工、土木にまわされた。

待遇は軍隊よりも、グンと下がった。

 軍隊の訓練、演習は、実に厳しいものに変わった。

途中で音を上げた者は、即、除隊となった。

そのために、全員、日を追って真剣になっていった。

語学と、道徳、思想教育は、徹底して、毎日行われた。

三月もすると、兵士の顔つきが、変わってきた。

挙動も、機敏になっていった。

いかにも、兵士らしくなっていった。


*


ナイジェリアの高台に二重掘りで、矢倉付きの豪華な城塞が建設された。

各所にも、城塞がたてられた。

軍事基地も、各地に建てられた。

 此処までが終わると、各地に、巡邏隊が巡回するようになった。

現地兵が主力であったが、鳳軍が重要な地位で混じっていた。

 大助は、真田忍軍を五百人からの人数で、偵察させていた。

 山奥の鉱山などに、隠れるようにして私兵を雇って、金を掘っている者がいるのが、数多く居るのが、報告されてきた。

「これを一つずつ、潰していかなければ、白人の影響はなくならない。徹底的に潰せ」

というので、これを一つずつ潰していった。

私兵と言っても、二、三十人ぐらいのものであった。

これを襲っていった。

ガトリング銃を廻し撃ちしただけで、投降してきた。

現地の者たちは、手形を持っていなかった。

札付きの悪ばかりであった。

白人が四人いた。

白人の前で、現地人の首を次々と刎ね上げていった。

白人は、拷問に掛けた。

他の仲間の居場所を知るためであった。

火箸のようなもの、真っ赤に焼いて、肛門に突き入れていった。

悲鳴をあげ、失神寸前、白状した。

四人の首を飛ばした。

隠れている者がいないか、徹底的に探索させた。

坑道の奥に隠れていた、白人を発見した。

ものも言わないで、大砲で粉砕した。

現地兵たちは、震え上がっていた。

振るえている者たちに、往復ビンダをくれて、目を覚まさせた。

「そんな事で、戦争が出来るか!」

 鬼軍曹の一言で、背筋を伸ばした。

一戦ごとに、兵士らしくなっていくのが判った。

 全部で、四十六個所を急襲した。

その跡地を、鉱山隊が掘削した。

重機で掘るので早かった。

想像以上の金や、ダイアが掘り出された。


                  *


「想ったとおりだったな。白人たちの地質学の方が遅れているんだ。もっと丹念に探査しろ」

 鳳国の地質学は、相当に進んでいた。

何個所かボーリングしただけで、巨大な金鉱があることを発見した。

それも、ダイアを含めて数カ所あった。

ほかに、鉄、石炭、石英、雲母、石油が出てきた。

鳳国は、相当石油の研究が進んでいた。

他の国では、外燃機関さえも、出来ていなかったのである。

「もっと、国の隅々まで調べろ」

 という大助の言うとおりで、アフリカは、鉱物資源の宝庫であった。

様々な資源の宝庫だったのである。

金だけでも、これまでで、最高量とも言うべき、埋蔵量がでてきたのであった。

直ぐにナイジェリアの高台に造った城塞を急遽三倍の大きさにして、厳重な城塞に改造した。

中に金蔵を二十蔵造った。

 その上で、農業学校の卒業生に、大規模農業の方法を教えて行った。

小麦、トウモロコシ、大豆、陸稲、水田、馬鈴薯、人参、蔬菜類を大量に耕作させた。

他の国々にも同様の耕作をさせていった。

各国々を鳳国式で耕作していくと、それまでの飢饉が嘘のように消えていった。

街の整備が進んで、上下水道が完備して、実に衛生的になっていった。

大助は、西アフリカ以外でも、アフリカを領有していった。

スーダン、エリトリア、ジブチ、エチオピア、ソマリアの五カ国を手に入れていた。

それらの国々でも、国土の改良を行って、食糧事情を改善していった。

紅海沿いの国ばかりであった。

そして、イエメンも領有した。

いまや、鳳国と聞いて、逆らってくる国はなかった。


                 *


南米に関しても、大助は、辣腕を、振るった。

パナマの隣国であるコスタリカも、食糧支援と武力で、平和条約を結んだ。

コロンビアが多少の抵抗をみせたが、正規軍のスペイン軍を蹴散らしてからからは、すべて紛争級の戦いで、恭順してきた。

これで、パナマに、ちょっかいを掛けて来る国は無くなった。

パナマ運河の開通後、大助は、孫一にいって、城艦を二軍団、メキシコ湾に浮かべた。

パナマ運河を城艦が通過することは、巨大過ぎて出来なかったので、海で組み立てたのであった。

それが二隻、メキシコ湾に浮かんだときの、アメリカの驚きようはなかった。

メキシコ湾が、鳳国の船団で、びっしりと埋まっていたのである。

「あの船団はどこから来たのか?」

アメリカ人も、メキシコ人も、キューバ人も、同様に驚愕した。

パナマ運河の工事は、最期の開通の瞬間まで、工事の進行振りは、メキシコ湾側には、見せないで出来たのであった。

そして、開通と同時に軍艦が一気に押し寄せたのであった。

それも、全てが、無垢の鉄艦だったのである、

鉄艦の船など、アメリカには一隻も無い。

世界中にも、鳳国以外には、一隻も無かったのである。

驚愕して当然であった。

「莫迦な・・・夢をみているのか?」

 誰もが、そう思った。

 その頃のアメリカ大陸は、インディアンとの戦いで、必死の状態であった。

西部に進出するのは、アメリカの『運命(ディステニー)』であるとさえ言われていたのである。

しかし、そこに、忽然として、鳳国軍がやって来て、インディアンと手を組んで、眼前に立ちはだかってきたのである。

 インディアンは、アメリカの武器よりも、新式の小銃を手にしていた。

一発撃つ度に引き金のカバーを前に、引き起こす方式の物では無かった。

連続して射撃できるのであった。しかも、銃の前方の下側に、パワールリップという握りがついたので、銃口が、安定した。

距離も、威力も、アメリカの物とは、比べものにならない位の、優れものであった。

アメリカ側が届かない距離から、インディアンは狙撃してきた。

武器の優劣は、そのまま、勝敗に直結していた。

西部に行くどころか、日に日に東部に押し戻されていた。

砦があると、戦車が三、四両出てきて、大砲で木製の砦を、いとも簡単に、破壊していった。

そこから、インディアンが銃撃しながら、馬ごと飛び込んで来た。

騎兵隊は、家族を容赦なく射殺していった。

面白いように、インディアンが勝利していった。

インディアンには、殆ど被害は無かった。

それほど、武器の優劣の差というのは、大きいものなのであった。

 インディアンにウイスキーを差し出した白人がいた。

黙って、ウイスキーの壜で、殴られた。

「こんな物で、俺たちを、騙くらかしやがって」

 至近距離で、小銃をぶっぱなした。

白人の体が、四散した。

「もう俺たちは、ウイスキーなど飲まん。他の土地では、麻薬を使ったらしいな」 

「そう言うことは、他の国の土地でやるんだな」

 別の、インディアンが、言った。

(駄目だ。もう騙しも利かない・・・)

 砦の者は、皆殺しにされた。

それだけの、憎しみを買っていたのだろう。

 インディアンたちが、雄叫びをあげた。

 白人は、西部に進出どころでは無かった。中部から、東部を奪われ掛っていた。

 しかし、鳳軍の木村重成は、城塞から、一歩も外に出ることは無かった。

 けれども、引き上げてくるインディアン部隊と、多少の重火器を使う部隊は、常に意気揚々といていた。

 殆ど、戦死もなかった。

 武器の差というのは、圧倒的に勝負を分けるものであった。

 鳳国インディアンの気勢は、上がる一方であった。

 そんな、矢先に、メキシコ湾に、とんでもない数の軍艦の船団が現れたのである。

 それも、司令船と言うよりも、海に浮かぶ巨体な城塞であったが、そこには、翩翻と鳳国軍大旗が翻り、各艦隊の旗も、林立していたのである。

一目で、鳳国軍と判るのであった。

「メキシコ湾に来るためには、南米のチリの先端回るか、カナダの北、北極海を回るしかない。それ以外の来るといたら、ヨーロッパ経由で、大西洋を回るしか無い」

 パナマ運河の情報は、鳳国軍内にも入っていなかった。

多国の他国の情報を蒐集するなど、まるでなかった。

インディアンとの対決だけに、気が向いていたのである。

 大助は、城艦の皇帝室に居た。

豪華客船の比ではなかった。

全面は、防弾硝子の広々とした見晴らしの良い部屋で、多くのの妃立ちを侍らせていた。

こうして、時には、妃たちのご機嫌をとることも、皇帝の大切な仕事の一つだったのである。

妃たちは、誰一人をとっても、天女のような美しさであった。

色々な国、人種の美女ばかりであった。

勿論、欧州人も、黒人もいた。

その国を、代表するような、美人ばかりであった。

いずれも、妃に相応しい上品さと色香を漂わせていた。

ソファーに、美女を侍られなから、アメリカや、キューバ、メキシコの風景を眺めていた。

「お邪魔かな?」

 と、孫一が、這入ってきた。

「どうです? 部屋の雰囲気は。隣には、広々とした寝室を造っておきましたから」

「至れり、尽せりだよ。だたな。戦争の雰囲気は、伝わって来ないな。贅沢を言って済まん。儂も、親父と同じで、いつも、戦っていたいのかも、しれないな」

「孫介の、アフリカも、確りと固めてきた。すでに、スエズに行く途中の国々も、分捕ってきた。紅海沿いよ」

「儂も、気になっていた」

「寝室、いつでも使って良いぞ」

「自分用のを確保してありますよ。こんなに、広い船の中ですから。それよりも、迷子にならないように。ところで、アメリカから使者が来たようです」

「ほう・・・」

 と軍服を着た。


                *


会議室に、大助が出向いた。本当に、案内をする者が居なかったら、迷子になりそうであった。

室内には、錚錚たる顔触れが揃っていた。

珍しく十兵衛の顔もあった。

信幸と、武蔵の顔もあった。

十兵衛も、忙しいことをやっていた。

カザフスタンに隣接するキルギス、タジキスタン、ウスベキスタン、トルクメニスタン四カ国と、アゼルバイジャン、アルメニア、グルジア、ウクライナ、ベラルーシ、リトアニア、ラトビア、エストニア、ルーマニア、ブルガリアと、十四の国を傘下に収めてきたのである。

これに、カザフスタンと、ウイグルが、入っているのであった。

「これは、驚いた。十兵衛と武蔵は、少し見ないな、と思っていると、飛んでもないことをしている。それで思い出した。武蔵、アラスカと、カナダの北部を見てくれ。木村重成は、多分、キューバと、メキシコに取りかかる。勿論、アメリカもだがな。アメリカのインディアン立ちにも、そろそろ、鳳国軍の制服をきせろ。窮屈がるだろうがな。アフリカも最初は、そうだったが、なれれば、格好が付くものだ。それにしても、インディアンは強いな。馬に慣れている。そこに、新式の銃を持たせて、徹底的に演習をしたから銃の扱いに慣れて、ガンガン、突っ込んでいく。アルコールも、やめたし。彼らの、自由になる土地も、造ってやりたい。先住民なのだからな。それと、スペインに、牛耳られている、メキシコ、キューバ、ドミニカを救ってやれば、また、様子も変わってくるだろう。キューバに、大砲の基地を造っておきたい。アメリカに向けてだ。今のうちに基礎だけは、造っておきたい」

「アメリカの使者が、会いたがっていますが」

「む。会おう・・・ここに呼べ」

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