第六章 6

   六


 東側からは鄭成功が、攻めていった。

鄭成功の二十五万のうち、五万は、台湾の兵として送りこみ、残りの二十万を、鳳軍に繰り入れて通辞兼用で、各隊に配置した。

 田川、明陽、猛竜、瑞祥たちもこの、掃討作戦に参加していた。

 買収した農地は、横倉、持田、黒川、国吉、小島、里見、佐久間の測量隊が、測量して、代金を即決で支払った。

 田中、内田、松井、屯田兵、工兵隊、象、馬、牛、犬を使って、日本式の水田や、畑として大規模農業国有化していった。

 売買契約書にも、署名捺印させて、領収書も、綴じていったので、文句のいいようもないものになっていった。

 それと同時に、農兵を募集していった。

農兵だけではなく、工兵、屯田兵、鉱山兵も公募した。

 かつての日本と同じで、地主と、小作で、構成されていて、小作人は、水呑み百姓であった。

 人口は、圧倒的に生活のできない小作人の方が多かった。

日当は、現金で、支払ったので、人口の多い小作人層からは、

「明は駄目だったが、今度の鳳の国では、わしらの暮らしも良くなるのではないか」

 と思わせるようになっていった。

 幸村は、掃討の隊長を、後藤又兵衛に交代して、北京に戻った。

各将軍にも戻るようにいった。

「最初の勢いが兵士や、将校に伝われば後は、圧倒的に追い込んでいくはずだ」

 という幸村の計算通りになっていった。

 馬賊も、盗賊も、彼らの思ったようには、活動できなくなっていた。

強引に町を襲おうとした馬賊は、盛親隊と、正純隊に殲滅され、拷問の末に、本拠地を突き止められて、一番規模の大きい馬賊の頭領が、盛親隊に仕留められて、壊滅していった。

正純隊も、幾つかの馬賊、盗賊を壊滅させていった。

明の力が侮られていたのであろう。

鳳になってからは、馬賊や、盗賊たちが、自分たちから解散していった。

反対不満分子も、追い詰められて解散していった。

 鳳の治安は圧倒的に良くなっていった。

 農業の大規模国有化も軌道に乗っていった。

農民たちの生活も圧倒的によくなっていった。

 幸村は、自分がやらなくてはならない民政部門を信幸がやってくれているのに、感謝していた。

 大久保長安の意見を取り入れて、連邦内と日本でも、通用する貨幣の鋳造を大阪城内と、九度山、和歌山、大和郡山で開始していた。

膨大な貨幣を造りためて置く必要があったので、すぐには実施は出来なかったが、すでに、三分の二ほどの貨幣は造りためてあった。

「国づくりは焦っても、どうにもなるものではない。国民が気が付いたときに、ああ、良い国になったんだと思ってくれる。それくらいの速度でよいのだろうよ」

 と幸村は、が信幸にいった。

「そうかもしれぬな」

 と信幸が答えた。

 北京は、喫緊の課題で、一里四方に拡大されたその城内で数十か所の貨幣鋳造所造られて、三交代制で、残りの三分の一の貨幣を鋳造した。

日本と同じ両・分・朱で、形もまったく同じにした。

コークスを使ったので、能率が良かった。

大久保長安も驚愕する、速さであった。

両替商を銀行と変えて、役所と銀行で、新貨幣切り替えの大規模な制度切り替えを断行した。

これで、長安の言う通りに多くの金が炙り出されてきた。

理由を聞いて課税をしていった。

内陸側に多くの検問所をつくり、沿岸(河川と海)部に監視船を置いた。

鋳造を行うと煙と匂いが出て、すぐに発覚した。

その場ですべてを没収の上、一罰百戒で、タチが悪く金額の大きいのを数組、斬首にして晒した。

これで、違反が大幅に減少した。

 幹部たちが集まった席で、幸村が、

「北京は狭い。場所も北過ぎる。武漢に首都を、遷都したい。気分も変わるだろう。武漢ならば中華、鳳の中央だし、長江が使えるので、いざというときには、海にもでられる。北京、西安(長安)は副都で、迎賓館に使える。それにしても、北京は、すでに敷地も確保したので、南北、西北をいまの五倍にしたい。それでも約一里四方だ。軍部の本部機能や、政府の民生機能を置くのには狭い。武漢は四里四方をとって、四辺に水濠を廻らし、土塁を高く上げ、石垣を、綺麗に造り、十二間の高さの土塀を造り、煉瓦を二重、三重に張って城漆喰で塗りこめ瓦は三州瓦にしたい。五十間置きに馬面を置き大砲や、その他の兵器で武装をする。城壁の幅は十間で、背後は、総矢倉にして二十間幅の六層のものにすれば、相当の宿舎、蔵、倉庫になるだろう。規模は大阪城をしのぐぞ、いや、まだ大阪城の方が大きいかな・・・」

 といった。武蔵が、

「四里四方あれば、中に演習場や、武道館を造れるでしょう。異国の兵を鍛える必要がある」

 といい、

「鋳造設備も城内に造れるし、隣接して海軍の基地、修理場、造船所も出来る。

いいのではないか」

 と孫一がいい、信幸が、

「政府の建物もできる。民政も重要なのだ」

 といった。

「城は孤城はよくない。四方に、十要塞を長江の南北に造るが、北側で四里四方だ南側にも四里四方の城を造る。南武漢城、北武漢城で長江には、城船艦隊を置く。十塞をどこに配置するかだ。これに、シャムの城ができる。完成した。交趾の交都、北海(ペイハイ)、南寧(ナンニン)海南島、広州と五つの城が完成した。今、取り掛かっているのが、重慶、成都、蘭州だ。もうじき出来るのが、済州島、ここは島ごと城になっているようなものだ。筑前博多城と、肥前名護屋城、薩摩城、首里城、対馬城と壱岐城、隠岐城、能登城、鳥取城、小浜城、小樽城、十三湊城、稚内城、根室城、陸奥湾内の城、箱館城、択捉城、北蝦夷城が、次々に出来ていく。朝鮮の恵山(ヘサン)白頭山の東、満州側にも造っている。佐渡城もある。清津(チョンジン)。城津(ソンジン)、咸興(ハムフン)、釜山城、光州城、木浦城、ソウル城と三十二の城だ。いい加減くたびれるぞ」

「恐ろしい数だ・・・」

 後藤又兵衛基次が、首を振っていった。

「いま、測量を終えて、懸命に設計中なのが、四十近くある。その中に、ジャリンダからチュミカンまでの、長城がある。ここには十以上の、城塞と砦が必要だ、この地域は、実行支配した国の領土になる。ナホトカ、ウラジオストク、ハバロフスクに城がいる北蝦夷の北部にもだ。チュミカンとジャリンダにも城がいる。これでシベリアの沿海州は、鳳になる。ロシアが攻めてくるだろう。返り討ちにしなくてはいけない。これで、鳳になるのだ。武蔵。判るな」

「はい。皇帝。大興安嶺山脈を越えるよりも、黒竜江を船で行った方が早いのは、圧倒的です。その先には、満州里があって、鳳なのです。そこの、シルカ川を使って、オノン川で、モンゴルのウールズに城を造れば、モンゴルは鳳連邦国です。黒竜江でも入れます。モンゴルは常にロシアの恐怖にさらされています。これを、守るのは宗主国の義務です。ゴビ砂漠を横断すれば、ウランバートルにも行けます。ここにコールタールの道をつければ、北京から一本道で最短距離になります。モンゴルの信頼を得ることは、青海省から先の、新疆ウイグル地区も、チベット地区も信頼してくるのです。チベットの文字は、横書きですが、それがモンゴルに入って、縦書きになりました。そのモンゴルの文字が、満州文字になっているのです。ここをロシアから守っておかないと、大鳳連邦国が、崩壊を始めます。これを維持するために、シルカ川からオノン川、ウールズに長城が必要です。実効支配の証拠を見せるのです」

「儂が、日本海側に城を築いているのは、すべて兵站基地のためだ。オノン川とシルカ川沿いに土塁と城壁を造るのは、シベリアの丸太の城壁でないと土壁では、無理だぞ。その外側に竹束を、鉄の帯で押さえていく。ロシアの武器はあって、種ヶ島級だ。考えた、あの寒さで割れないもので、一応鉄砲を考える丸太と竹束しかない。しかし、シベリアには、竹はない。日本から造って運ぶのが一番早い。しかし、まだ絶対にやるな。内側の城、砦が完成してからでないと、敗残するぞ」

「はい。判っております」

「む。それが、北側だ。ロシアは、向かってくる力はない。鳳本国の内政は、真田信幸将軍と、直江兼続、大久保長安に民政を担当させる。真田信幸は、江戸にも気を配ってくれ」

「む。上田と、沼田の、心ききたる者を城代でいれているが、ときには戻ることにする」

「戻ったときには、名古屋、大阪、京都も見てくれ。そろそろ、朝廷の宮廷が出来る。御上が、移られたら、即京都城を跡地に造る。跡地だけではせまいので、その周辺も買収する。もう、買い取ってある。これで、朝廷はなにも言えない。なぜなら、鳳の皇帝の方が、朝廷よりも上なのだ。皇帝が出す詔に逆らうことは、日本は出来ない。そろそろ、秀頼に関白を譲って、朕は、太閤になる。秀頼の年齢もそういう年齢であろう。ところで、喫緊の問題が南で起きている。シャムのアユタヤ王朝のソンタム国王が悲鳴を上げている。スコータイ王朝と、チェンマイ王朝、ビルマ、東北州、東州がアユタヤ朝に戦を仕掛けている。チャンタブリーの城も出来たので、これらの国々を成敗に行く。これが成功すれば、大越、カンボジア、ラオスにも総督府を造る。ここのチャンタブリーには、大助を入れる。伊木遠雄が後見で入ってくれ。南洋に慣れているのが先決だ。陸軍二十万、海軍十艦隊、海兵十艦隊、城艦隊一個がいる。雪は九度山に戻ったが、淀はどうする? わしには、まだやならなくてはならない、連邦国のための仕事が七人残っている側妃と、庶妃を一応は、接しておかなかくてはならいので、この北京にいる間に済ましておきたい。そうしないと、つまらないことで連邦にひびが入ることになる」

「判りました。皇帝をお待ちします。わらわは絶対に皇帝からはなれません。北に行こうと南に行こうと・・・」

「判った。これは皇帝の仕事だ。理解してくれ」

「はい。それはそれでございます。皇帝・・・」

 淀が凛といった。

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