第五章 6

   六


「朝鮮は、三女を、皇帝の妃として差出したい。すでに。皇后は、二人おられる。東皇后と西皇后がいらっしゃるのは知っています。ですから側妃で、結構です。そうでないと連邦にならない。日本だけが特殊なのです。宗主国の皇帝と閨閥のない国は心細いのです。それが、大陸の皇帝の宿命です」

「そうなのか? 梶原・・・」

「はい。正しい風習です」

「台湾も、余の二女を、側妃に差し出したい」

 と成功が言った。

続いて、琉球の尚王が、

「琉球も余の三女を、皇帝の側妃に、差し出したいのですが」

「うーん。頭が混乱している」

「それが、大陸における連邦なのです。より、強い繋がりのために古い仕来りで、皇帝が断れば、連邦に入れないという意志表示となってしまうのです。養女は、庶妃となります。他国の大臣の娘であってもいいのですが、大抵は、国王の養女で、庶妃に列します。側妃、庶妃の多さが、皇帝の威厳となるのです。正式の席でも背後に側妃は、向かって右側、左が庶妃です。皇后は左右に並びます」

「淀・・・」

「政治です。愛とは関係ありません。宮様が左で東皇后、わらわは右で西皇后ですよ」

「判った・・・」

「でしたら、承諾と答えなさい」

「む。三人とも側妃で、承諾である」

 幸村が答えると、全員が、拍手をした。

「家臣たちもどうなるか心配していたのですね。宮様はいいけど、側妃以下のみを、溺愛したら承知しませんえ。わらわだけを見ていて」

「みんな異国の女性だよ。愛しようがないだろ。言葉も判らないのに」

 淀が、みんなに見えないように、幸村の手を、強くにぎった。

「才蔵。あんたは、皇帝じゃないの」

「判ってるよ」

「わたし以外の女と、怪しい関係になったりしたら、殺すからね」

「・・・」

「でも、皇帝も大変だねえ。男の機能全開だよ」

「その上、淀様から、チクチクやられている」

「ねえ、才蔵・・・」

「む?」

「結婚するんでしょ」

「するよ。みんなの前で、発表されちゃたからな・・・」

「ふふ・・・」

「何がおかしい?」

「好きだよ・・・」

 佐助が、才蔵の手を握ってきた。


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