第四章 5

   五


 幸村は、そこで少し間を置くと、

「そのときには、師団単位で動くのではなく、最小で、五人で一班になって動ける訓練を徹底して行え。小隊単位、中隊単位、三個小隊、五個小隊、三個中隊、五個中隊と言ったように、自由自在に隊の隊形を変化出来る訓練と特訓を行い、何よりも、敵の規模に騙されて、深追いをせず、待ち伏せて隊と挟撃していくことだ。訓練は、各練兵所で、紅白に分かれて、実戦形式で行うことだ。秀頼隊、大助隊、香苗隊も参加して置け。以降、秀頼隊は、竜虎隊、大助隊は、麒麟隊、香苗隊は、鳳凰隊と呼ぼう」

「はいっ!」

 と秀頼と、大助が、声を揃えて答えた。

「そんな危険な前線に出るのですか?」

 と淀が心配をした。幸村が、

「そうではないが、戦というものは、生き物だ。関白となる以上は、あらゆる経験を積んで、部下たちに、先頭を斬り進ん行く背中を見せるときが、ときには、必要なのだ。ひ弱い関白の誕生など、誰も望んでいない。これまでの、基礎訓練、個人の武道修練、演習、特訓、戦への参加は、これからのためのものだったのだぞ。そんな心配よりも、儂の心配をしろ」

「は、はい!」

 幸村の、男性的な態度に、淀は、思わず素直にしたがった。

「そういうことになるだろうと、造船廠、木工廠、鉄鋼廠、化学・科学廠、防弾ガラス班、銃器廠、砲兵廠、動物廠から大量の人を、特別編成して、大、中、小の戦車、戦闘装甲車、装甲車、本陣車ではなく司令車を、防弾ガラスを多用して、一万輌、造りました。すでに完成しています。戦艦も、海軍、海兵隊、陸軍内海軍の各艦隊に一隻づつの城艦を、造りました。今、操船と兵器操作の訓練中です。旗艦や本陣船が黙って、お辞儀をする巨大な艦船の城です。 一つの艦が、海軍の最大の戦闘艦と同じですが、横に四隻、縦に八隻を、この図から考え付きましたが、楼船です。 長江と、黄河、明はこの二本の川を占領したら、終わりなんです。だったら、恒常的に占領していればいいではないかと思いまして、二本の川の上流、中流、下流に浮かぶ城塞を造ってしまえば良い訳です、しかし、そんな大きな船は持って行けないし、造船所がありません。そうしたら、高山の五郎松と言うからくり細工師なのですが、変な男がいまして、『川の上で組み立ててしまえばいい』 というので、模型を造ってきましたよ。儂も驚きました。太い角材で、縦横を繋いでいった、歯車の応用で、把手をクルクルと回すだけで、角材が軽く接合できる。これで横四隻、縦八隻の島が出来ました。 全て平ですから、接合したらビクともしません。帆柱だけで、一隻七本ですから。二百二十四本なのですが。中央の部分は折畳み式です。 船底にはフィンキールも付いています。中央に五層の天守閣が出来た。主砲だけで九十五門。これまでの、そう、江戸城を六発で崩壊した大砲の一・五倍あるかな。 勿論、明でも満州でも、ヨーロッパにも、そんなに、大砲はありません。 兵器はすべて搭載してあります。完全な浮かぶ要塞です。三十二個の錨で止まっていますがその巨体のまま普通に走れますよ。でも浮いていた方が怖いでしょう。 可動式の桟橋出て、超大型が、十四隻付けられます小型艇は無数に付けられます。 他に浮き桟橋が幾つでも付けられますから、船の楽園ですね。中には、食堂、酒保、音楽も、踊りも見せますよ。お運びは、若い女性です。憩の場が、必要ですから。主計の事務所、病院、入院も出来ます。 しかし、一番大切なのが、兵粮、殆どの食材を積んでおきます。地域で積むものを変えますが、薪、石炭、武器(弓・箭・鉄砲・弾丸、各種、鉄砲の弾倉から。ガトリング銃・砲、弾丸、迫撃砲の弾丸、火薬や、撒き菱、馬防柵の杭、馬、牛の飼料、虎の餌の肉、火炎放射器のガスボンベ)、寝具、鍬・シャベル・もっこ・もっこの棒、金棒、鶴嘴、手押し車、消毒薬、アルコール、各種薬品、包帯、衣類、包丁、まな板、箸、お玉、調味料、お菓子、墨、筆、硯、紙、各隊の旗、吹き流し、法螺貝、銅鑼、陣太鼓、縄、莚、土嚢用袋、幕、鋸、トンカチ・・・これらを整理して、隊長、責任者の、署名があれば、船に渡す。輸送船が来たときの受け取り、収納、記帳、発注、つまり、重火器の戦闘、敵船の撃沈、鉄砲、弓矢での戦闘船。医療船。安息船、娯楽船、宿舎、迎賓館。そして、兵站基地。天守閣からの望遠鏡による見張り。小船による伝令。作戦会議室。こんな多目的なことは、この艦船以外ではできない。各場所分は、出来ました。メコン河。黒竜江は、氷結期は、無理です。シャム湾、渤海、黄海、トンキン湾と言ったところです」

 孫一が、長い説明を終えた。

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