第二章 7

   七


 幸村は、何時でも攻撃できる態勢を執っておきながら、徳川の幹部の引き抜きにかかったのであった。

 こうした面のブレーンには、孫一も、武蔵も、向いていない。

 伊木遠雄。戸田民部少輔為重。戸田為重は、秀吉の蔵入り地の代官で、七万石の大名十人衆の一人であったが、思慮深く、計数に明るかった。

交渉も苦手ではなかった。

飯田左馬介家貞。矢野和泉守正倫。

飯田、矢野は、大野治長の武将であったが、大野の失脚後は、幸村に忠誠を誓って、大阪城内の経理についてを、正直に話をして、治長の不正を暴くのに貢献していた。飯田、矢野とも、思慮深く、正義感が強かった。

青柳千弥、高梨内記、霧隠才蔵、そして以外な人物が活躍していた。

郡山小太郎(風魔小太郎)と、徳川の内情に詳しい、服部半蔵であったが、二代目であった。

 伊木、戸田、飯田、矢野、青柳、高梨、才蔵、小太郎、半蔵の九人と、孫一、武蔵を会議に加えた。

十一にで、真田丸にあつまった。真田丸は、

改装をしてからは、大阪城とあまり雰囲気は、変わらなくなっていた。

 幸村が、なぜこんな面倒なことをするのかについて、説明をした。

「これ以上、血を流したくないということと、有能な人材を活用したいということだ。江戸、武蔵(地名)を獲った後、不満分子を、こたびのように造りたくないということだ。当然、農業は、大規模農業で国有化する。大名は不要だ。この近代化を理解できる人物を、確保しておきたい」

「本多正純は、父親の正信よりも切れる。家康よりも、秀忠に近い。秀忠は、徳川の実力を過大評価していない。正純は、例の両替商と、米問屋から金子を二千両づつ借りています。二人を信用しています。本多一族に影響力をもっていましす。悩んでいる秀忠と、本多一族を、引き抜いて、正純に説得させたら、大久保一族以外、従ってきますよ。いま、大陸の蛮族を入れた一件で、譜代は家康離れを起しています。柳生但馬と柳生忍軍は徳川の中で浮いています。柳生の莫迦但馬は、本多正純を狙うかもしれません。わたしのところと、半蔵殿のところで、警固をしていますが、もしも但馬が、正純を狙うようなことがあったら、青柳様か、高梨様が、直接あって、新しい日本の形を説いて、力になってみてはどうかと、秀忠さまと、鈴木様、宮本様が会ってみるのも、面白いことになる気がします。家康、秀忠父子には、微妙なずれがあります」

「判ったその後だな。各個に落していくのは」

「はい。殿下・・・出来るだけ江戸での戦は」

「避けよう。面白いことをしてみる、江戸の庶民たちに、大阪城の関白様からだと。こめを配ってやろうと思うのだが・・・」

「それは、効果がある。配り方は?」

「蔵前でどんどん、一人五合枡で一杯づつにしよう・・・」

 というので、徳政米の名で配った。

米と一緒に

「関白様は、江戸の窮状を、本気で心配している。良い日本にするために、改革を断行したい」

 という趣旨のビラを配った。

そして、

「江戸以外では、どこも改革が成功して豊作で、生活も豊かになっている」

 ということも書いた。

これを十日間行った。

 役人が、邪魔には入ることを考えて、海兵隊の旗艦船と、陸上に重装備の軍隊を置いた。

 役人は手の出しようがなかった。

 江戸城は、瓦礫のままであった。

 侍たちは、家康、秀忠に従って、松山 (現・埼玉県東松山)城に行ってしまっている。

 次に、騎兵隊が戦闘装甲車を前後に二台づつで護衛させて、一升用の米俵を荷馬車に山のように積んで、一隊で十台を押し並べて、四隊が、別々の方向に馬首を揃えて、配って廻った。

その時には、

「すでに江戸は、徳川支配の時代ではなくなった。関白太政大臣豊臣・真田幸村様の直轄御支配の地になった。徳川は、朝廷から征夷大将軍の地位も返上の御沙汰があって、徳川幕府も閉じさせられた。江戸のすべての奉行所・役所・役人はすべて、単なる私兵である。関白様の兵こそが、正規の役人である。その証拠に、江戸城は崩壊して無人となり、家康も、秀忠も、松山の城に逃げて、震えて立て籠もっている。この広報紙が、間違っていると思う者は、何時でも申し立てに参れ。なお、このビラを奉行船(海兵隊本船)に持参した者には、金子の褒美を取らす」

 と言うビラを撒いた。

ビラの裏には、

「なお、米、雑穀、野菜、魚は、従来の所にて、販売している。生活に困ることはない、安堵せよ。仕事の無いものは、江戸城再建の普請をはじめるので、普請場に並ぶようにせよ」

 という趣旨のことを書いて撒いた。

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