第二章 3

   三


 船も本隊に速度を合わせていた。

(何はともあれ、後金を斃すことだ。いまは、そこに全力を注ぐことだ)

 幸村がそう思った時に、空の裸馬が大量に疾走していた。

五、六十頭はいたであろう。

「後方で確保しろ。やったな」

(十人組の仕事だと、直ぐに判った)

 裸馬に根津甚八が乗っていて、馬の上から、

「殆ど逃がした。十頭とは残っていないはずだ。馬に気を取られている間に、海野六郎と筧十蔵が、弓の弦を全部切った。穴山小助と、才蔵、由利鎌之助が、寺の図面を手早く描き取っている。人質は本堂と庫裏にいる。庭にも相当の兵がたむろしている」

「伝令! 寺の庭に限定して、刺激剤の強い、迫撃砲を、撃て! 本堂と庫裏は避けろ! 突撃」

 隊が一斉に動きだした。

 船も動いた。

川岸にいた連中を、一斉にガトリング銃で、撃ち斃していった。

 馬がいなくては戦えないのが、女真族であった。

しかも、矢箱の中に油が、撒かれ、手りゅう弾が、投げ込まれ。

矢がバラバラになって、とでも使い物にならなくなっていった。

 種ヶ島銃には桶で水を撒いた。

火種が点かなくなってしまった。

 武器は槍と刀だけになってしまった。

そこに迫撃砲が、炸裂した。

多くの人間が、吹き飛ばされた。

「うわーっ!・・・」

 と叫んで走り廻る男がいた、その男の胸に火薬矢が刺さった次ぎの瞬間に男の体が爆発して、五体が木端微塵になった。

 火薬矢は、動いている人間に次々と刺さっては、木端微塵になっていった。

 さらに戦車が、突っ込んできた。

本堂から、女を連れて逃げようとした男がいた。

男の頭に弾丸が当たって、西瓜が割れるように、吹き飛んだ。

 女の腰が抜けた。

 女を盾にして逃げようとする男がいた。

その男は、横から飛んできた弾丸で、脳味噌が噴き出て倒れた。

 五十人近くの兵が、一斉に、本堂と庫裏に踏み込んて来て、男と判ると、鉄砲が、発砲されていった。

 女だけを、一ヶ所に集めていった。

 手を上げて出てきた男がいた。

陰部に弾丸があたり、つづいて、胸に火薬矢が命中した。

次ぎの瞬間に男の体が木端微塵に砕け散った。

 やがて、女真族のことばで、

「男は早く寺の外に出ろ。グズグズしていると死体が増えるぞ」

 放心状態になっている、裸の男を、二人射殺した。

 その間に、三人の女を救出した。

 男たちが、走って、寺の前の道に並んだ。

 馬に乗って逃げようとした男がいた。

射殺されて、馬から転落した。

 女たちに、

「女性は、まだいるのか?」

 と訊くと、女が、仰臥している、裸身の女を指差した。

 三人の兵が見に行くと、女はすでに絞殺されていた。

 女の傍に、五人の男が震えていた。

五人とも射殺した。

「頭(かしら)を探せ。拷問に掛けろ」

 三人の男を寺の蔵に連れて行って、黙って指を三本切り落とした。

そこに火薬を少し振りかけた。

火を付けた。

悲鳴があがった。

 次の男に、

「隊長はどこにいる? 一番上の位の隊長だ」

 その男が白状した。

「本堂の須弥壇のしただな」

 二十人の兵が白状した場所に向かった。

十人の男が捕まった。

その中に、日本が三人いた。

「隊長を、指させ・・・」

「・・・」

「判った。虎を連れて来い」

 十人の男たちは、口の中に箸のような鉄の棒を入れられて丈夫な紐で、固定されて頭の後で堅く縛られた。

 舌を噛んでの自殺を、防止するためであった。

 忍び独特の、六尺棒を使った縛り方で十人を有蓋車の中に入れた。

目隠しをした。

これが一番怖いのである。

再び、有蓋車の前に、十人を立たせた。

一人々々、眼隠しを外して、頭は誰かと訊いた。

日本人の番になったので訊いた。

 右から三番目の男を指差した。

 女真族の男に、女真族の言葉で聞いた。

「嘘を付いたら、これを、虎に食わせるぞ」

 と陰部を出させた。

 右から三番目の男指差した。

目隠しをした。

その途端、男が断末魔のような、悲鳴を上げた。

捕虜になった、者たちの眼前で行ったのである。

 虎は、男の陰部を食い千切った。

 美味くなかったのか、ポロンとその場に抛りだした。

「死体の数と、捕虜の数をかぞえろ」

 才蔵が配下の者にいった。

「合計七十五です」

「よし。撤収!」

 掃討班と、掃除班が残った。

 被害者の二十人のことがあった。

香苗が、一人々々に、

「この村にいたい?」

 と訊いた。

「早く逃げたい」

 と言うのが。全員の答えであった。

「私たちと一緒にいく?」

「そうしてください。お願いです」

「それだったら、約束して」

「はい」

「絶対に自殺しないで。でないと意味ないでしょ。必ず、幸福になれるようにします。約束よ」

 と三百人の女性隊員のなかで、普通に接するよにして、出来る限り多く眠るようにさせた。

一人に、一人の担当者がついた。

「眼を離さないでね」

 と担当者たちにいった。


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