第一章 8

   八


 鈴木孫一が、五百人隊(香苗隊は三百人)のために、特別の武器を、二種類造ってくれた。一つは、連弩からヒントを得て造った、連続発射銃で、マシンガンであった。

三十発撃てる。

銃の先に折り畳み式の二脚が付いていた。

手前に、パワーグリップが付いていた。

英文通りにパワーグリップと呼んでいた。

パワーグリップと銃の間には、レンズが二枚入っていて、内側が鏡のようになっている龕灯(がんどう)が付いていた。

銃剣が付く、背中には才蔵が、考えてくれた忍者刀を背負った。

胸のベルトには、手投げ弾が三個装備されていた。

孫一の特製であった。

ピンを外してから、三つ数えて、投げるのである。

 この千三百人は、秀頼五百。大助五百。淀三百で、三人から絶対に離れなかった。

勿論、乗馬は、モンゴル人の乗馬の名手から習っていた。

淀も、秀頼も、大助も、同じようにあらゆることをならっていた。

これ以外に、行信の命令で、高野聖の手練れの忍び軍団が三百に常についていた。

三本の河川の上流の水深も、今戦闘が勃発しようとしている場所も、糸魚川の軍勢が後金の軍であることや、美濃路を通っているのが、徳川高康の浪人部隊であること、三国街道の軍が、択捉島からのものであることも、すべて掴んでいた。

 幸村は、いざというときのために、強襲揚陸艦から、戦車、戦闘装甲車、装甲車、その他の物資や、兵士を降ろし、川の両側を進んで行く隊も大隊二隊を、投入した。

犬隊と、象隊に檻に入れて布を被せた虎を五十頭曳かせた。

「岡谷よりも手前で、敵と、遭遇するかも知れぬぞ。敵は、二手に分かれて、三国街道組と、合体使用する組と、甲斐、相模の戦線に向かおうとする組は、甲州路をくるだろう。斥侯隊を、多く出してくれ」

 斥候隊とは別に、真田忍軍や、十人組、雑賀、根来も山道を上っていった。

それとは別に、風魔党が、相模や、甲斐に侵攻している、徳川の譜代軍の動きを克明に掴んで、各砦や、城塞、屋敷に伝えていた。

大道寺軍が、小田原から三個師団、三万で、陸路を進発していた。

戦車、戦闘装甲車、装甲車、騎馬隊が先発していった。

徒歩兵や、小荷駄隊は、陸軍内海軍の戦闘輸送艦で、小机と、玉(甘)縄を目指して海路を進んだ。

こうしたところは、幸村の合理性が、十分に生かさせていた小机城にも、大砲、迫撃砲、ガトリング砲、ガトリング銃が整備されていた。

他の城塞、砦、屋敷にも、こうした武器は備えられていた。

 さらに、海軍が、荒川と、利根川、鬼怒川を遡っていった。

日本海側から、新潟の信濃川、千曲川を遡っていった。

糸魚川から姫川を遡り、太平洋側から天竜川を遡って行った。

 さらに日本海側の海軍が、四個艦隊を総展開して、敵の船影を探索した。

発見したら、空砲と赤い狼煙を上げることになっていた。

姫川と天竜川、信濃川千曲川、荒川、利根川には海兵隊、陸軍内海軍も同時に、侵攻していった。

 中部地方、上越、北関東、南関東、甲信、相模には厳戒態勢が取られた。

 幸村の豊臣軍は、家康軍の二万人を、一個大隊で撃退出来る、武器の近代化の大差があった。

 幸村は、敵に、

「出会えば、必ず撃退出来る」

 という自信を持っていた。

「後は、時間の問題でしょう」

 と武蔵がいった。

甲府城には、伊丹周防守正俊、平井七郎兵衛保則、北川宣勝、山川賢信らが城を護っていた。

 大将には毛利勝永を置いていた。

毛利豊前守勝永は、関ヶ原以降、豊前小倉から、土佐に追放されていたが、脱走して、大阪城に入った。

筋金入りの豊臣派であった。

 また、諏訪城には、明石掃部全登、湯浅左近正寿を置いてあった。

大名十人衆の一人であったし、明石は、主家、宇喜多家が没落して、大阪城に来たのである。

 岡谷を過ぎて最初に当たる城であった。

美濃路から来るとすると飯田城で当たるはずであった。

 もっと言えば、三河の大樹寺から来るとなると岩村城、恵那城、さらに西になると豊田城に異変があっても不思議ではないのであった。

 八万からの大軍である。

掻き消える訳はないのであった。

 が、忍軍たちの報告で、理由が判った。

「山の中に五十以上もの砦と言うか、根城の隠れ家を置き、そこから、バラバラに、本隊に参加していったようで。少人数で、間道を通って、各城を避けて、水窪、南信濃、大鹿から」

 と報告する忍びの者に、幸村が、

「待て。それだと高遠城で当たるはずだぞ」

 というのに、

「大鹿で松川に逃げて、駒ヶ根、伊那、箕輪、辰野から、間道を通って茅野の南の甲州で大軍が姿を見せました。甲州路を取っています」

「韮崎城であたるか?」

「はい。戦闘態勢に入っています」

「ここは、赤石山脈と、八ヶ岳、茅ヶ岳に挟まれた、盆地の一本道だ。逃げるとしたら、須玉から、清里しかない。小諸、佐久から、兵を出せ。鉄の盾で隙間を造らずの、鉄砲、火薬矢で、野辺山原で、待ち伏せろ。戦車、装甲車、馬車、荷車の屋根に乗ってでも急げ」

 船は遡っている。

忍びは、船から降りると、木の枝に、木版を吊るすと、二個の大小の木槌で、木版を叩いて信号を送った。

かなり遠くで、木版が鳴った。

高遠にも、音が聞こえて、戦闘態勢を取った。

 高遠城は、名島民部少輔忠純であった。

大名十人衆の一人であった。

三万石の大名であった。

 船の櫓を南蛮式に漕いだ。

すると手と同時に足にも力が入った。

その足の力で、水中扇(スクリュー)を回転させたので、速度があがっていた。

 そのことを言うと、孫一が、

「九鬼の悪戯ですよ」

 とニヤリと笑って、

「船を降りるぞ。船首を右舷側の岸に付けろ!」

 船首の先頭の板が大きく回転して、次々、板が伸びて行き、陸地に橋が架かった。

接合部を確認して、白旗が降られた橋には、滑り止めの横木が何本打ってあった。

千三百人隊は、一斉に、ロープを船の鉤(フック)にかけて、ロープを伝わって、猿のように次々と降下していった、実に素早かった。

秀頼、大助、淀までが同じようにして降りていった。

 これには、幸村も、

「ほう・・・」

 と感心した。


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