第七章「軍備の鬼」1
第七章「軍備の鬼」
一
書院に幹部が集まった。大阪城の書院である。
淀、秀頼、大助、孫一、武蔵、伊木、才蔵であった。
「孫一。海軍の新戦艦は?」
幸村が訊いた。
「はい。注文通りの時期に十隻。今までの安宅船の形式ではありません。大、中、小の戦艦です。主砲が船首に、上段三門、下段三門。船尾に三門です。筒の長さが、これまでの大砲の十倍です。内径が、三倍。鋳造ではありません。コークスのお蔭で、鍛冶仕事が画期的に変わりました。それで出来たのです。鉄が飴のように柔らかくなって、内径になる、芯の棒に見事に巻きついて行きます。それで、ライフルもできます。それを何回も重ねていったものです。弾丸は元込め、撃針方式で、薬莢で発砲しますが、弾丸が長いので三枚羽が後方と途中に同じ向きで付いています。弾丸の下半分がアルコールで、アルコールを細い噴出口から、三本、噴射します。噴射させるのは、石炭から採取したガスの力とアルコールの引火力です。火を噴射しながら、飛翔します十里以上は、軽く飛びます。噴進弾といいます。先端は、槍の穂先と同じです着弾とともに爆発しますが、その力が、先端部に加わります。どんなものでも破壊して、目的に到達します。一隻、木津川に来ています船の外から見た方が、その威力が判ります。これと副砲が、右舷四門、左舷四門です。これに船首に迫撃砲八門、船尾四門。ガトリング砲船首四門、船尾四門。両舷側四門。ガトリング銃、随所で、この戦艦以上の戦艦は、ヨーロッパにもありません」
というので、船を見にいった。
見てその威容に、驚嘆した。まさに戦う船であった。
戦艦の名に相応しかった。
「これが海軍だ!」
と幸村が叫んだ。
船首に突きだした六門の大砲は、これまでの大砲と規模が違っていた。
世界のどこにもない大砲であった。
黒々とした、砲身をを見ただけで敵は戦意を喪失するのに違いなかった。
その実射を見た。
相当の沖合いに出てから無人島の岩のような小島があった。
十里以上離れていた。それを標的にした。
「発射!」
と号令と同時に赤い旗が振られた。
上段三門が同時に火を噴いた。
弾丸が飛翔した。
孫一が言うように火を噴いて小島に向かって飛んでいった。
三発とも、小島に命中した。
爆発音が轟いた。
硝煙が消えた後で、
「小島が消えた・・・」
と淀がいった。
全員が、驚愕して、呆然となった。
「もう、判った・・・」
幸村が首を振って、
「帰ろう・・・」
と呟くようにいった。
「江戸城が吹き飛ぶのが眼に浮かぶわ。誰か、戦は止めた方か良いと」
「殿下。それは、もう、考えるだけ無駄ですね」
と武蔵がいった。
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