第三章 10
十
「直すよりも、溶かして、造り直した方が早いだろう。鍛冶仕事になるがな」
家康が中島に残していった大砲を、鈴木孫一に修理が利くか尋ねたのである。
久振りに大助とともに九度山に帰っていた。
そこに孫一を呼んだのである。
幸村は、大阪城だけではなく、その他の色々な工事を行っていた。
大阪城から、紀伊街道を拡げで弾丸道路を造った。
九度山に一気に行ける街道を造ったのである。
さらに、大阪城から大和郡山城を経由して、伊勢湾にまで抜ける道を造った。
久居(ひさい)城と、津城を押さえて真田が支配した。
ともに藤堂の城であった。
久居城の近くの、阿漕(あこぎ)湾、香良洲(からす)、三雲に砦と造船所を造った。
さらに、大阪城から和歌山城までの道と、和歌山城から九度山までに弾丸道路を造った。
九度山と大和郡山城の間にも、弾丸道路を造ったのである。
和歌山城は、浅野長晟の城であったが、没収して大和郡山城とともに真田が取った。
これで、大阪城から、九度山、和歌山城、大和郡山城まですぐに駆けつけられた。
八風峠は千草街道とも呼ばれて、物流の要衝であった。
津から駆けつけられる道も付けた。
和歌山城から近い海南、広川の二ヶ所にも造船所を造った。
幸村の頭の中には、厖大な規模の水軍が思い描かれていたのである。
そのことを孫一に語って、
艦船に取り付ける大砲の依頼と、九鬼長門守守隆、向井将監忠勝、千賀与八郎信親、小浜民部少輔光隆、分部左京亮光信、蜂須賀阿波守至鎮たちに船大工を集めるように命じた。
「金が要る。仕事場から造らねばならぬ。人が増えると、宿舎も造らなくてはならぬ」
「構わぬ。吹っかけろよ。取りあえず二千両持って行ってくれ」
「え? 二千両。どこで手に入れた」
「家康と、秀忠が忘れていった。慌てて逃げたからな。忘れていったのだろう。わざわざ届ける必要もあるまい」
「そういうことか」
孫一は何度も頷いて、
「特急でやる」
「一つ頼みがある」
「む」
「発射を、撃針式にしてくれ。ここに図面集がある」
「南蛮の図面だな」
孫一は、暫く見つめていたが、
「何とか出来るだろう」
「薬莢の火薬を強く打つことで、爆発して、弾丸が飛ぶ、弾丸の先端には火薬が詰まっていて、着弾の衝撃で、目標地点で再度爆発する。その火薬の中に鉄片と刺激剤を入れてくれ。大阪城での戦いに持っていったのは、この九度山の工房で造ったものだ。全て成功している。知っての通りな」
「着弾したときに、改めて爆発させるためのものだな。その爆発のときに、一緒に鉄片が四散したら、飛んでもない大砲だ」
「南蛮では、その大砲が主流だ」
「うむ」
「鉄砲、大砲というと、みんな筒に気がいっている。撃針式と種子島では、まったく違う武器だ」
「む。それは判る」
「大切なのは弾丸だ。筒型で、先端を円錐形にしているのは、筒の中のライフルとの摩擦が強過ぎないようにするためだ。これの按配が巧くいけば、筒内の摩擦が大きくなる分、弾丸の距離、推力、方向性の確度は高くなる。違うか?」
「真田幸村と言う男を、怒らせたら怖い。直ぐに製作にかかる」
「弾丸専門の作業場を、大きく造ってくれ。鉄砲も撃針式をたくさん作ってくれ」
「驚いた。どこで、それだけの知識を得たのか」
「戦は儲かるものぞ。勝てばな」
「この大砲が出来れば、負けるはずがない。この大砲と同じ方式の鉄砲も造るんだろ。何挺だ」
「手始めに一万挺」
「うっ・・・」
「そこから改造していく」
「・・・」
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