第三章 2

   二


 秀忠の陣営で〈楽しんできた〉諸将に、

「あって困るものでもあるまい」

 と十両づつの金封を与えていった。

「各々方の忠義への証しに対するもので、他意はござらぬ」

 と幸村が、言葉を添えた。

豊家譜代、浪人派、七隊長が、一つにまとまったのである。

安い〈楽しみ代〉であった。

「豊臣軍十万を、一つの軍団と考えて、陣割の編制を勘考いたしたいが」

「幸村殿にお任せするが、筋でござる。執権総都督兼家宰、羽柴筑前守に逆らえる者が、この大阪城に居りましょうや?」

 と薄田隼人が強い口調でいった。

「大野治長とは違う。真の力で淀様、秀頼様をも、あのようにお変えになられた。万人が認める、執権総都督でござる。あの秀頼様があのように、力強くなられた。そこまでのお力があられる、幸村様がお決めになられること。我らが、無い知恵を絞ったところで、多寡が知れておる」

 後藤又兵衛、塙団右衛門らも、大きく頷いて、全員が、幸村に平伏した。

関ヶ原における、真田幸村の武勇は、誰もが知っていたし、大阪城に入城して以来の、真田丸を根城にしての数々も十分に承知をしていた。

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