あまぎふ!~憧れの彼女に告白したら異世界で魔王をやってるお義父さんに召喚び出された!

ぼちぼちぼっち

第1章 異世界留学少女

第1話 異世界召喚?

「あっ、やっと起きたわね。あなたのせいで異世界召喚されちゃったじゃない! どうしてくれるのよ!」


 何やら彼女の怒っている声が聞こえる。

 ゆっくり目を開けると、僕の傍らに立って覗き込むような形で見下ろしている彼女の姿が見えた。


 何故だか僕は地面に仰向けに倒れているようだ。身体中の力が抜けたような感じで起き上がることができないし、なんだか頭がぼうっとしている。


「あれ? 僕はどうしたんだろう?」


「どうしたじゃないわよ! そっちこそどうしてわたしを呼び出して告白なんかしてきたのよ? そのせいで転移魔法が発動しちゃったんだから!」


 ちょっと意味が分からない。


 たしかに彼女を校舎裏に呼び出して告白をしたところまでは憶えている。だけどその後の記憶がない。


 どうやら僕はいま彼女に怒られているらしい。

 その理由は僕のせいで異世界召喚をされてしまったから? 


 てことはここは異世界? 

 そんなバカな。


 やっぱり彼女が何を言っているのか理解できない。

 それにまだ心と身体がふわふわした感じが治らないし、下から見上げる彼女の制服のスカートがゆらゆら揺れているのが気になって、考える事に集中できない。

 見えそうで見えないというのがまた集中力を奪われる。


 いや、ダメだ。

 男子高校生たるもの好きな女の子のスカートの中が気になってしまうのは仕方がない事だとはいえ、良くない事だし今はそんな場合でもない。


 いったん目を閉じよう。


「なに寝た振りをしてるのよ! 人が話をしてるんだからこっちを見なさい!」


 目を閉じたのは僕なりの彼女に対する誠意のつもりだったんだけど、逆に機嫌を損ねてしまったみたいだ。

 そう言っているうちに少しずつ身体に力が入るようになってきた。やっと起き上がれそうだ。


 僕は身体を半分起こして辺りを見渡すと、青々とした樹々の隙間から太陽の光が差し込んでいた。

 涼しい風が吹きぬけ木の葉が擦れる音だけが聞こえている。


 知らない森の中だった。


「ええと。姫宮さん? ここは一体どこなんだ?」


「分からないわ。少なくとも城の近くではないわね。一人用の転移魔法に二人が巻き込まれたせいで軌道が狂ったんだと思う」


「それ以前に、さっきから言ってる転移魔法だとか異世界召喚だとかってどういうこと?」


「何を言っているの? あなたも転移魔法でこちらの世界から向こうの世界に渡ってたんでしょう? 魔王の命令でわたしを監視するために」


「いや違うけど」


「違うって……。じゃああなたは一体なんなのよ?」


 何なのかと言われても、それを聞きたいのはこちらの方だ。話が全くかみ合ってない。


 急に異世界召喚とか魔王って言われてもって感じだし、夢の中なのかそうでなければ何かのドッキリなのか? 


 どうしたものかな……。

 とりあえずは話を合わせてみるか。 


「なんか誤解されてるみたいだけど、僕は魔王の手先なんかじゃなくて、普通の高校生で……。君に告白したのも、ただ自分の気持ちを伝えたかっただけっていうか……」


「そう。この期に及んでまだとぼけるつもりなのね。でもおかしいわよね? わたし知ってるのよ。あなたが以前からわたしの事をずっと見ていたのを。それってわたしを監視していたって事でしょう?」


 いつも見ていたのを気付かれていたのか! 


 それは事実だから仕方ないとして、とぼけているとか、おかしいとか言われているのはやっぱり意味がわからない。


「ごめん。いつも見ていたのは謝るけど、監視してたとかそんなのじゃないよ。僕もいけないとは思っていたけど、好きな子の方に無意識に目が行ってしまうのは抑えられなくて」


「すす、好きってなによ! 普通の高校生がわたしを好きになれるはずがないでしょう。あり得ないわ! 何をバカな事を言っているのよ!」


 僕みたいなただの普通の高校生が彼女のような超絶美少女を好きになるなんて、大それた事だと言われたら確かに言い返せないけど、あり得ないとまで言われるのはさすがにヘコむ。


「……好きになったらダメっていうのは分かったよ。でも僕は本当にとぼけたり嘘をついたりはしてないんだけど」


「もう何なのよ。バレバレなのにそうまでして正体を隠そうとする理由はなに……」


 そう言いかけた時、彼女はふと何かに気づいた様子で、辺りを見回した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る