SMILE CHANGE~思い出のミケから☆新たな希望ユリへと~

ミケネコ ミイミ♪

ੈ✩‥短編

 私の家には『ミケ』と言う名前の三毛猫がいた。


 ミケは迷い猫で、家にきた時にはまだ小さな子猫だった。


 私はそれほど、動物が好きというわけではなかった。けれど、職場と家との往復の日々で、その時はかなり疲れていた。


 1人で暮らしている為か、趣味といえばネトゲをやったり、ゲームやSNSのフレと話をするぐらいだった。


 そんな退屈な時を過ごしていた事もあり、私はもしかしたら少しは何かが変わるのではと、この子猫を家で飼う事にした。


 それにこの家は元々、親が残してくれた一戸建ての家だった為、この子猫を自由に飼う事ができた。


 そして私は、この子猫に『ミケ』と名前をつけた。名前の由来は、たいした意味もなく、ただ単に三毛猫だったからである。


 その日からミケは、私が疲れて帰ってくると、いつも玄関で帰りを待っていてくれた。


 そんなミケが可愛く、私はいつしか癒されていき、家に帰るのが楽しくなっていた。




 それから数年がたち現在。……あの嵐の日からミケは家に戻って来なくなった。


 家の周りは車の通りも少なく、のどかな地域だ。


 それもあり、最近太り気味のミケの運動の為、猫用の首輪をつけ、たまに外に出してあげていた。


 その日は予想より早く雨が降り出し、思っていたよりも仕事が忙しく、いつもより帰りが遅くなってしまった。


 私は仕事が終わるとミケの事が心配で、急いで家に帰った。


 しかし、いつも玄関の前で、私の帰りを待っているはずの、ミケの姿はどこにもなかった。


 その時は、どうしたのかと思い心配はしたけれど、この突風と雨で、探しに行く事が出来なかった。


 雨がやめば戻って来るかもしれない。それに家に帰って来なければ、仕事は休みだし、明日探せばいいと思い、その晩は眠る事にした。


 そして翌朝。私は戻って来ていないか、家の軒先など、至るところを見てまわったが、ミケの姿はどこにも見あたらなかった。


 私は急いで朝ごはんと着替えを済ませ、ミケを探しに行く準備をした。


 そしてその後、私は外に出て『ミケ』と呼びながら、ひたすら探して歩いた。それでも、ミケは見つからなかった。


 ネットの友人にもお願いし探してもらった。だがそれでも、一向に見つかる気配はなかった。


 そんな日々を繰り返している内に、私は気力を失い、いつの間にか探すのをやめていた。


 これだけ探しても見つからないなら、あの嵐の晩ミケは既にもう……と諦める事にしたからだ。


 それからというもの、私の生活のリズムは以前のように乱れはじめ、日々憂鬱で退屈な時を費やしていた。


 ただ違う事といえば、ミケがいなくなった後ぐらいから、情緒不安定になってしまい、スマホの中のミケを眺め、色々と考えながら泣く日々が続いていた。




 そんなある日。仕事が忙しく、かなり疲れていたせいか、ベッドに横になると、すっと眠りについた。


 私は滅多に夢を見ることはないのだが、その日に限り珍しく夢を見た。それもミケの夢だった。


 草原で寝転びミケと笑いながら話をしていた。


 そして夢の中のミケは、なぜか私と会話ができていた。


『ミケ。ここって、すごく気持ちいいねぇ』


『うん、そうだね』


『でも、ここはどこなの?』


『ごめん。ここが、どこなのかは言えないんだ。……ただ、今なら一緒にいられるし話せる。それに、お礼も言えるしね』


『それは、どういう事?』


『それも言えない。色々と制約があって、うるさいらしい。だけど、もうこれで会えなくなるし、最後にこうして話をしたかったから、お願いしたんだ』


『ミケ……?』


『……ねぇ、ボクといてホントに楽しかった?ボクは、すごく楽しかったよ』


『うん、もちろん!ミケといて楽しかったよ。ただ、ミケがいなくなって寂しくなってた』


『そっかぁ。嬉しいような、悲しいような気がするけど、いつまでもボクは一緒にいられない』


『確かにそうだね。でもねぇ……あっ、そういえば!ねぇミケ、あの嵐の晩なにがあったの?』


『……ごめん。それは言いたくないんだ。これは自分が招いた事だしね』


『ミケ……分かったよ。聞かない事にするね。それに、なんとなくミケの今の話を聞いてて、もうここにはいないんだなぁ、って事が分かったし』


『うん……。ねぇ、お願いがある。ボクとの思い出を全部、忘れてとは言わないけど、つらい事は忘れて欲しいんだ』


 そう言いミケは俯き何かを考えているようだった。


 そしてその後、私を見るとミケはまた話し出した。


『……もしそれでも、まだつらいようなら、他の猫を飼ってあげて欲しい』


『他の猫を?』


『うん、少しは気持ちが落ち着くんじゃないかと、思ったんだけど』


『そうだね。ミケを忘れる事は無理かもしれない。だけど、他の猫を飼うことで、少しは落ち着くかも』


『……よかったぁ!これで安心できる。じゃ、そろそろ行かないといけないから……ボクは行くね』


『ミケ……そっかぁ。うん、今まで側にいてくれて、ありがとう』


『それはボクのセリフだよ。ありがとう、今まで育ててくれて……これで心置きなく行くことができる』


 そう言うとミケの姿は徐々に薄れていった。そして私が最後にみたミケは笑顔でいっぱいだった。


 その後、私は涙を浮かべながら目を覚まし、しばらく夢でみた事を頭で整理してみた。


 そして何故あの夢を見たのか、あれが実際にミケがみせてくれた事なのかと考え、だとして私に何を伝えたかったのかと、色々と模索していた。


 だが結論はもう既に出ていた。ただ、それを実行に移すには少し時間が必要だった。




 そして数日後、私はやっと気持ちの整理をする事ができ、近くのペットショップに来ていた。


 そこには多種多様な生き物がいた。


 私は家に引きこもりがちだった為か、こういう感じのお店には入った事がなかった。


 そして、私は猫のコーナーを見て歩いた。


 動ける範囲位のケースの中には猫達がいて、各ケースごと1匹ずつ入れられていた。


 子猫が1匹から3匹に分けられ、各ケースに入れられていて、私がケースを覗くとミャーミャーと鳴いていた。


 私はどの子猫も可愛く感じたが、その中でも白くて毛並みが綺麗な、もふもふした感じの可愛い子猫が気にいった。


 だがその時、一瞬ミケの事が頭をよぎった。


 ……でも、もしかしたらこの子猫なら、ミケがいなくなった寂しさを埋めてくれるのではと思った。


 そして、ケースに貼られている金額をみて、今度は手が止まってしまった。


 だけど、今の自分には必要なんだと言い聞かせ、カードでこの子猫と、必要な物を購入し家に連れて帰った。




 その後、家に帰るなりすぐに、使っていない部屋を片付けスペースを作り、子猫をケースから出してあげた。


 そして私は子猫を抱きあげ、


「名前を決めないとね」


 私はどんな名前がいいかと試行錯誤し、色々と考えながら、ふと外に視線を向けた。


 すると、庭には白い百合の花が咲いていて、この子猫も毛の色が白いし合うのではと思い『ユリ』と名付ける事にした。


 私はその日からユリを可愛がり、呼ぶ時は笑顔で『ユリにゃ!』と呼ぶようになっていた。


 その後も、ミケを忘れる事はなかった。だけど、ユリのおかげでつらい毎日から抜け出す事ができていた。


 そして私はあの時の事を思い出し、いつもミケに感謝しながら、ユリと楽しい日々を過ごしていた。…………【~完~】

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