【途中完結】唯一の女友達がずっと隣にいてくれる

三一五六(サイコロ)

二年 一学期

1.「一人」

 先月、唯一の親族であった母が天国へ旅立った。

 死因は薬の大量摂取による自殺。

 一週間、否、二週間は泣き続け、自分自身を恨んだ。


 前から母が追い込まれているのは分かっていた。

 僕を育てるためのお金と死んだ夫の借金返済のため朝から晩まで働き、ボロボロになって顔は数十歳は老けていたからな。

 でも、僕には勉学を優先するように言い、バイトはさせてもらえなかった。

 その代わり家事は全て僕が担当し、出来るだけ母の負担を無くそうと努力はしたのだが、どうにもならなかったようだ。

 恐らくだが借金の返済が終わり、母は死を決めたんだと思う。

 僕に迷惑をかけるものが無くなってホッとしたに違いない。

 そして自分の役目は終わったのだと思ったんだろう。

 まだ僕は高校生だというのにな。


 母の火葬と泣き続ける日々の食事で僕の全財産は底を尽きた。

 だから、必要な分の服と日用品以外の物を全て売った。

 僕が物心つく前に死んだ父の物から死んだ母の服やアクセサリー品、家具、そして『一軒家の家』も。

 とにかくお金が欲しかった。

 そうしないと生きていくことが出来ないから。


 二週間かけて全て売り、手に入ったお金は約1000万円ほど。

 そこそこのお金だが、家を失ったにしては大した金ではない。

 ボロボロの一軒家だったから仕方ないのだが、もう少し欲しかったというのが本音。

 だが、そんなことも言ってられない。

 だって、これから僕はこの1000万円と背中のバッグと共に一人で生きて行くしかないのだから。

 母の死など引きずってはいられない。

 まだ同じ場所には行きたくはないからな。


 じゃあ、まずはバイトを探そう。

 寝床は安いネットカフェでいいだろう。

 あ、そう言えば、学校はどうしようか。

 母が亡くなったと高校には連絡はしたが、一週間しか休みにはならなかった記憶がある。

 ということは、もう僕は三週間ほど無断欠席していることになっているはずだ。

 僕と連絡を取る手段である家の電話はない上に、もう家も存在しない。

 学校側も流石に心配しているだろう。

 けど、今の僕が学校に行く時間など存在しない。

 その時間は生きるために働く時間に変わったのだから。

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