第12話

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 悪竜ヴァルゴンが高速でユウリに迫る。ユウリは右手に風扇を構えて、挙動を観察し始めた。

 右爪を振るってきた。ユウリは合わせて風扇を叩き込む。

 爪と扇がぶつかり止まった。ユウリはたんっと右足を踏み込み、がらあきの腹部へと左足をぶち込む。

 蹴りは見事に命中した。悪竜ヴァルゴンの体勢が崩れる。

 ほぼ同時、「キラーヴォ」とユウリは呟き、風扇に代わって雷槌らいついを生み出す。

 間髪入れずに雷槌らいついを打ち付けた。頭部にもらった悪竜ヴァルゴンは、帯電しながら吹っ飛んでいった。

「一丁上がりだ! 次はどいつだよ! どんどん来やがれ!」

 声を張り上げると、二体が横一列になって迫ってきた。

雷槌旋グラザステッラ!」すばやく唱えると、雷槌らいついが瞬時に雷そのものと化した。ユウリは即座に全力で横投げする。

 円弧軌道で雷は飛んだ。二体を真横から貫き、電気ショックでもって地に沈める。

(動きは速いし、初見の相手だし油断はできない。けどどうにもならないってほどじゃあない。頼りたくはないけどフィアナもいるし、なんとかなる!)

 希望が見えたユウリは、戻ってきた雷槌らいついをキャッチししゃがんだ。一瞬後に真上を悪竜ヴァルゴンが通過した。

 ユウリは振り返り、今度は上手投げで放った。先ほどの一体に当たると、バチチ! という音とともに墜落した。雷槌らいついは少し行って逆進し始め、ユウリは難なくそれを掴んだ。

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