ファーストキスは小学生
中須ゆうtive
1キス ファーストキスは小学生
俺は今警察署にいる。目の前にはおじさんという名の警部が機嫌悪そうに机を揺らしながら、こちらを見ている。
おじさん警部の問いかけに俺は無言を貫く。黙秘権は法律だ。黙秘権バンザイ!え?なんでこの主人公は開始早々、警察署に居て黙秘なんてしているの?そう思った?思ったでしょ?いやね、俺は何も悪いことしていないんだよ。読者のみんな、聞いてくれるか。この事件の一部始終を。
今日は高校の入学式だったんだ。クラスでお友達を作ったり、落し物の苺の髪飾りを職員室に届けたり、幼なじみの女子に炭酸飲料10本を同時に飲まされたり、それはもう平和な時間だった。だが、平和な時間がいつまでも続くとは限らない。悲劇は帰宅途中に起こった。なんと、曲がり角から飛び出してきた女子小学生とぶつかってしまったではないか。バランスを崩した俺は女子小学生に覆いかぶさった。口と口の距離わずか1cm。マジでキスする5秒前ってこういうことか。当の女子小学生はぶつかってしまった衝撃で気絶中だ。マズい。このままだとファーストキスは小学生になってしまう。そう悟った俺は体を離そうとするが…。そこを偶然通りかかった近隣住民たちが騒ぎ立てる。
近隣住民A「きゃー!!痴漢よ!」
近隣住民B「小学生をキスして押し倒している!」
近隣住民C「事案だ!変態だ!通報だ!」
そして今に至る。お解りいただけただろうか。俺は何も悪くないんだ。それなのに確かめもせずに、俺は警察署に連行されたんだ。こんな人たちに本当のことを話しても信じてもらえる訳がない。だから黙秘しか選択肢は無いのさ。
霧雨「なんとか言ったらどうなんだ?」
麓介「なん。」
お望み通りのお返事をするとおじさんが何故か怒っている。その時だった。
警察「霧雨警部!幼女が目を覚ましました!」
霧雨「ほほう!じゅるり…連れてこい!」
幼女「あの…その人悪い人じゃありません。」
はい、形勢逆転ホームラン。身の潔白が証明され、晴れて自由の身になった。女子小学生の話はこうだ。忘れ物を取りに学校に戻ろうとしたら曲がり角で超イケメンなお兄さんとぶつかった。たったの一行で無事解決。超イケメンなお兄さんとは俺の事よ!しかし、俺の苦労は何だったんだろう。黒髪ロングの柚の髪飾りをつけた女子小学生は言った。
幼女「お兄さん、ごめんなさい。」
麓介「いいってことよ!」
俺は間髪入れずにそう答えた。出所した俺は幼女を送ってあげることにした。女子小学生と一緒に帰られるなんてラッキーだと思いながら幼女を見る。幼女は幼げな辿々しい歩き方をして俯いている。く〜っ!かわいいなぁ。たまらない。食べちゃいたい。そんな俺の欲望は言葉になった。
麓介「おおおおおおお嬢ちゃんおおおおおおお名前は?」
おっと、女子小学生と話すのは4年ぶりで恥ずかしくておをいっぱい言ってしまった。略しておっぱい。すると幼女は困りながら小さな口を開けた。
柚子「私は
麓介「柚子って言うんだ。俺は
柚子は軽く微笑んでくれた。その天使のような笑顔に俺の心は少しドキッとした。すると柚子がこんなことを聞いてきた。
柚子「なんて呼べば良いですか?」
はい、待ってました!俺は咄嗟に鼻息を荒く返事した。
麓介「お兄ちゃんって呼んで!」
柚子「えっ…お、お兄ちゃん。」
柚子は戸惑いながら、こちらに聞こえる程度の小さな声で言ってくれたんだ。一人っ子の俺はこの貴重な体験があまりにも嬉しくてうさぎ飛びをして、声を漏らす。
麓介「ぐへへ。ぐへへへ。」
柚子は若干引いている気がしたが、俺には関係ない。柚子ちゃんマジ天使。そうこうしているうちに柚子のお家に着いた。
柚子「お兄ちゃん今日はありがとうございました。あの…迷惑かけたお詫びに明日一緒に遊びませんか?」
ファーストキスもしたことないウブな俺が初めてデートに誘われた瞬間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます