第77話 脆弱。
「俺に喧嘩吹っ掛けてきた、自分達を呪え。」
俺は戦意喪失し、正座する男に向かってキックを放つ。
「そこまで、お兄ちゃん!!」
俺の蹴りを両腕で防いできたのは、妹の美柑だった。
「相変わらず強い蹴りだね、お兄ちゃん……。」
「み、美柑……何で……。」
「GPS!スマホの位置情報、共有してるじゃん!!」
美柑はスマホをポケットから取り出す。
「あんた達、邪魔だから早く消えてくんない?次わいて出たら私が相手するよ?」
美柑は男二人をギッと睨み、顎で促した。
「す、すみませんでしたぁーー!」
男達は雑木林を転げる様に走り去っていく。
「お兄ちゃん。」
ーーパシィィン!!
俺は頬に美柑の平手打ちを食らう。
「そんなに弱くちゃ駄目だよ!?」
……弱い?俺が……?
「言っとくけど、心の話だからね。そんなに脆い心じゃ、これから先が思いやられるなぁ。 やっぱり私の推しの浜辺先輩しかいないかなぁ、お兄ちゃんを引っ張っていけるのは。」
美柑は頭の後ろに手を組み、憎たらしくニヤリと笑う。
「ば、馬鹿言うな!今の喧嘩は、向こうから喧嘩吹っ掛けてきただけで……!」
いや、違う。それを理由に憂さ晴らしをしたかっただけだ……。
「実はね、家の近くを散歩してたら、伊崎さんていうすずちゃんの側近さんに会ったの。その人が言ってたから。お兄ちゃんの事が心配だから見てきてって……。その人はすぐに車で何処かに行っちゃったけど……。」
そうか……だから美柑は、俺の行動をGPSで見ていて、不審な動きをしたからここに来たって訳か。
「ありがとう、美柑。バカな事してた……。」
「お兄ちゃん……。」
「てか、美柑。お前、そんな格好で本当に散歩してたのか……?」
美柑は薄黄色のキャミソールに薄手の白いパーカー、そしてフリフリの薄ピンクのミニスカートにサンダル姿だったのだ。
「これは………その、たまにはチャレンジをね!? いつもジャージじゃ女子力磨けないし……?」
いつもジャージ着てないだろ。と思いつつも、俺はおそらく家からすっ飛んで来てくれたから、そんな『しっちゃかめっちゃかなカッコなんだな。』と心の中で、急いで着てくれたであろう妹に感謝していた。
「赤い紐パンはまだ早いと思うぞ?」
「…………………馬鹿!!」
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