第38話 仲直り完了。

「お姉様、良かったです! 海斗先輩、ありがとうございます!」

俺達がリビングルームに行くと、沈痛な面持ちですずちゃんを待っていた面々が、ソファーに座っていた。

奏ちゃんは、すずちゃんを見つけるや否や、すぐに駆け寄りすずちゃんに抱きついていた。


本当に仲のいい姉妹なんだな……。

「あ、あの……。」

浜辺がおずおずとすずちゃんの前に立つ。

「さ、さっきは、本当にごめんなさい……気軽に他人のスマホを見ようなんて……。あの、えっと……。」

余程自分に責任を感じていたんだろう。

しどろもどろになっていて、言いたい事が言えていない状態になっている。


「浜辺さん、気にしないで下さい!もう大丈夫ですから!」

「すずちゃん…………。」

「お姉様……何か雰囲気が変わられましたね……?」

奏ちゃんは何かあったのかと、不安そうにすずちゃんと俺の顔を交互に見つめてくる。


確かに俺も正直、今の様にハッキリと相手の目を見て発言したすずちゃんは初めて見た。

今回のスマホの件で、何か彼女の中で大きな成長があったのだろう。


「ありがとう、ありがとう………ごめんなさい!すずちゃん……!」

泣きながら何度も何度も謝る浜辺。

彼女もずっと罪悪感に苛(さいな)まれ、ここで一人、苦しんでいたのだろう。


「そういや、俺もスマホを確認してねぇな。」

すずちゃんのスマホの件で、俺はふと、自分のスマホの状況を確認していない事に気付く。

何かしら連絡が来てた……り……。


俺はスマホを起動させると、誰からか連絡があったかチェックする。


ーーーーこの、名前……………。

文芸部部長の『峰崎波留(みねざきはる)』だった。

俺は恐る恐る峰崎に連絡を取る。


『もしもし。』

「部長、夜分遅く申し訳ない……。連絡が来ていたので……。」

『あぁ、あの話か。あれは君だけコンクールの小説の提出がされていないから、進捗を聞きたかったのだよ。どうだい、出来ているかい?』

峰崎部長の言葉に体全体が凍りついたような寒気を覚える。


ーーーースッカリ忘れてたー!!

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