第37話 忘れられない感触。
あの柔らかい感触と温もりは何だったのか……。
何となく分かっている……。
いや、確信できる……。
あれは、『ほっぺにチュー』とかいう、ラブコメによくある展開だ!
しかし、そんなシチュエーションが俺なんかにあっていい訳がない!
今迄、喧嘩に明け暮れてきた俺が実は学年万年2位で頭が良く、人助けばかりしているなんて……そをやな中途半端な主人公がいていいものか!
否、断じて否!
そんな奴はラブコメにゃいねぇ!
「かっ、かか、海斗せ、せせせ先輩!! き、傷の手当に行きましょう!!」
緊張しているのか、すずちゃんはさっきよりも声が上擦って、吃(ども)っている。
すずちゃんは、歩きもぎこちなく……というか、ナンバ歩きになってるぞ……。
このすずちゃんの緊張具合からすると……あれは本当に……。
「キス……。」
ハッ!と気付いたときにはもう遅かった。
ボソリと呟いた俺の言葉はすずちゃんにしっかりと聞こえていたらしく、ギギギッ……とまるで錆びついたゼンマイ仕掛けのオモチャの様に、ぎこちなくこちらを振り向く。
「キ、キス……の天ぷらなんて美味しいよね!!あはははは!!」
無理すぎたか……。
スマホの待ち受け画面といい、さっきのキス?といい……これは俺には刺激が強過ぎる……!
「…………………。」
ほら、黙っちゃったよ!やっぱりあれはキスなんかじゃなかったんだ!
思い上がりも甚(はなは)だしい!
ごめんなさい、すずちゃん!
「い、いい、嫌でしたよね……。好きでもない人からのキ、キスなんて…………。」
すずちゃんは、顔を赤らめながら俯(うつむ)く。
ーーーーーーうえぇぇぇぇぇ!?
や、やっぱり、キスだったの……?
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