第30話 健気な二人。

「すずちゃんと奏ちゃんの部屋?」

俺は軽い脳しんとうを起こしたのみで、少しだけベッドで寝かせてもらう事になった。

「……はい。それよりも、大丈夫ですか?」

すずちゃんは額に手を乗せると俺の熱を測る。

「大丈夫……ありがとう……。」

美柑のやつ、ちょうど顎にかすめる形でビンタかましやがって……。

「最近は災難続きだな……。」

「すみません……。」

「違う違う!すずちゃんの事じゃないから大丈夫!」

「お姉様は少し心配し過ぎだと思いますよ?」

奏ちゃんの言うとおりだな……。

しかし、何だろう……二人がいつも寝ているベッドに寝ているからだろうか……。

凄くいい匂いがするんだが……。

「お姉様、私はお水を取ってきます。」

奏ちゃんは立ち上がると部屋を後にする。


「ゆっくりと休んで下さい。あと、柵……ありがとうございました……とても嬉しかったです!」

そう言ってニコリと微笑みかけてくれるすずちゃん。

「気にしなくていいよ。それより、スマホ返した時言ってたよね?見ましたか?って。なにかあったの?」

俺の不意の問い掛けに、ボンッと一気に顔が赤くなるすずちゃん。


「あ、あれは……そそその……うぅ……。」

何やらモジモジしている。

「言いたくないなら言わなくていいよ! ただ少し気になっただけだから!」

「……は、はい………………。冷え冷えシート持ってきますね!」

すずちゃんは慌てた様子で部屋を出ていく。

いらん事聞いちまったかな……。


「今、お姉様とすれ違いましたが、何か話してたんですか?」

入れ替わる様に、水入ったボトルとグラスを持って奏ちゃんが部屋に入ってくる。

「うん……いらん事聞いて、すずちゃんの気分悪くさせちゃったかも……しれない。」

俺の言葉に奏ちゃんは首を傾げるとこう言った。


「それはないと思いますよ?今すれ違った時、凄い笑顔でしたから。」

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