第15話 引っ掛かっていたモノ。

突然やって来た美柑。

俺と一緒にベッドに横たわるすずちゃん。

発狂する美柑、説明する俺、叫び声に気付き入ってくる黒服の男達。

「すず様、ご無事ですか!?」

あぁ、なる程。すずちゃんの警護の方達ね。


ーーーーん?

何か引っ掛かるが、何だろう……。

何かスッキリしないこの感じ……。


とりあえず、美柑と警護の方達には落ち着いてもらい、美柑にはこれまでの経緯を詳しく話す。

「ベッドに入ってたのは……ベッドに……ぐぅっ! ……とりあえず、解りたくないけど、解りました……。 でもやはり何か釈然と致しません……私が小姑みたいではないですか……ぐぅぅ!」

美柑は唇を噛み締めて、何かを押し殺した様な表情をし、俺を見る。

「……お兄ちゃんが無事ならそれでいい。」

美柑……何て出来た妹なんだ……。

出来損ないの俺には勿体無いくらいの妹だ。


「………あの、海斗先輩。さっきはいきなりで緊張して言えなかったんですけど……あの時、助けて頂いて本当にありがとうございました!」

すずちゃんが改めて頭を下げてお礼を言ってくる。

「いや、俺は大した事はしてないよ。それよりも無事で良かった……って、それだ!」

俺が気になって引っ掛かっていた事。

治療に専念しすぎて完全に失念していたが、どうやってすずちゃんは事件に巻き込まれ、どうやって助けられたのか……。


「すずちゃん、どうして君はあの連中に捕まったんだ?さっきもいた様な護衛が、その時にもいたはずだ。」

「あの日は私と友人の…………『館林美樹(たてばやしみき)』……さんと、二人で寄り道に誘われました。美樹さんがウィンドウショッピングをしたいとの事でしたので、私も誘われるがままに付いていきました。 ですが途中、無理矢理路地裏に引き込まれて……。」

なる程……。ウィンドウショッピングと銘打って、護衛から引き剥がし、人質に取って金をせしめる予定だった訳か。

あまりにも杜撰(ずさん)な計画だな……。


「と言う事は、俺がやられた後すずちゃんを助けたのは探しに来た護衛か……。」

「はい……。あまりにも戻って来るのが遅いので、恐らくは護衛の皆様はスマホのGPS機能か発信器で探知したのだと……。 私が護衛を外したせいで……。」

仕方無い話だわな……。

友達と帰りに寄り道してウィンドウショッピングくらい、女子高生ならしたいし、護衛を付けてショッピングなんて楽しめるわけ無いからな……。


「しかし、その美樹とか言う奴は、すずちゃんを『売った』って事になるんじゃねぇか?」

俺が何気なく放った一言にすずちゃんの表情が強張る。

「お兄ちゃん!!デリカシー!」

「スマン……。ごめんなさい……すずちゃん……。」

「いえ、実際……そうでしたし……。彼女とは、急に仲良くなったんです……何の前触れも無く、教室で突然話しかけられて、それから……。

そうか……。すずちゃんの家庭が裕福なのをどこかで聞いて、今回の人質事件にまで発展した訳か……。


「警察は……。勿論、知ってるんだよね?」

鳳星院グループは『色んな噂』があるから、ちょっぴり勘繰ってしまうが……。

「勿論お話はしました。……美樹さんも……残念ですが……。」

悲しそうな顔を浮かべるすずちゃんだが、正直、美樹とかいう奴には同情は出来ないな……。

金持ちと知るや否や、寄ってきて彼女の優しさにつけ込み、人質に取って金を要求しようなんざ、友達でも何でもねぇ。


「これからは常に護衛を付けておいたほうがいいよ。友達と出掛ける時もだ。 少し厳しい言い方になるかも知れないが、すずちゃんは普通の女子高生だが、『周りはそう思っていない』恐れがあると言う事だ。」

俺だってこんな事は言いたくはないが彼女の為でもある。


「……解りました。以後、気を付けます……。失礼致します…………。」

そう言い残し、すずちゃんは俯きながら病室を後にした。


ーーこれで良かったんだよな……。

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