第16話 ディスポーザブルズ。

雲一つなく晴れ渡る空、澄み切った空気。

遂に病室の薬品まみれのニオイからやっと解放されたのだ!!

つまりは退院したという事なのだ!

ただ一つシコリを残して……。

すずちゃんに掛けた最後の言葉。

美柑は『すずちゃんの為ならそれは仕方無い言葉だよ』と言ってはくれたが、ストレートに言い過ぎて若干……いや、実は相当後悔している。


「はぁぁぁぁ。言わなきゃ良かったかな……。」

不良らしくねぇとお思いでしょうよ。えぇ、そうですとも。気にしぃなんだよ!


ーーティロン、ティロン!

俺のスマホのだらしない着信音が鳴り響く。

「おぉ、直也。どうした?」

『まずは退院おめでとう!良かったな、早めに退院出来て。』

「ありがとう……。」

さっき考えていた事もあってか、嬉しいんだが素直に喜べない自分もいた。

『…………さては、すずの事だな?』

「な、何で……。」

『何で分かるかって?昨日帰って来てからずっとニヤニヤしてるから、何かあったのか聞いたら、お前に真剣に心配して貰えたのが嬉しかったらしくてな。 今もはしゃいでるよ。』

……何だよ、俺の取り越し苦労って訳か……。


「そっか、なら良かった。心配してたんだ。キツく言い過ぎて傷付けたかもってな。」

『いや、今回はすずが甘く考えていた結果、招いた事件だ。 まぁ、それはアイツ自身が一番分かっていると思うが。 あ、それと今回の人質事件の犯人グループ、【ディスポーザブルズ】っていう半グレ集団らしいぞ。』

半グレ……ディスポーザブル……ズって事は使い捨て集団って事か……。

半グレとは、簡単に言うと暴力団には所属せず、犯罪を行う集団の事だ。

「めんどくせぇ奴等が相手だな。」

『あぁ。まだ残りがいるらしいから充分気をつけろよ。』

「ブーメラン。」

そう言って俺は電話を切った。


せっかくの夏休み、半グレ集団なんかとムサ苦しい毎日を過ごしたくなんかないね。

俺はこの夏休み、自然を満喫するつもりなんだ。

入院中、綾瀬も浜辺も須藤も一日しか見舞いに来なかったし、他のクラスメイトなんざ、一人も見てない。

「あーやだやだ、気が滅入るねー。」

「あら、気が滅入ってるとこ悪いけど、貴方には一緒に来てもらうわよ。」

ウンザリしながら退院した俺の背後から女の声がする。

ーーこの俺が背後の気配に気付かなかっただと!?

俺が振り向くとその女は冷徹な眼差しと不敵な笑みを浮かべた。


そう、俺はまだやらなければならない事が残されている事に、気付いていなかったのだ……。

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