第3話 綾瀬美波

綾瀬美波(あやせみなみ)がどんな人物なのか。

改めて説明しておこう。


俺ははっきり言って授業は好きじゃない。

だが、そんなはぐれ者の俺が何故わざわざ授業を受けているのか。

それは、同じクラスにいる『綾瀬美波』のせいだ。

万年テスト二位の俺は常にトップをひた走る綾瀬をぶっ倒すべく、勉強をしている。

だが、何度テストを受けても数問差で負けて毎回苦い思いをしている。

俺は何でも一位でないと気がすまない性分だ。

奴だけは絶対にぶっ倒して一位は俺が頂く!

だからそれを邪魔する奴はぶちのめす。


因みに綾瀬は学校ではアイドル並みの人気者で、背は170センチと女性の中では高めで、モデル体型。

巨乳で性格良し、顔良し、面倒見も良いと来てる。

頭脳明晰で、黒髪のロングヘアーにカチューシャをしている。

更に運動神経も抜群ときてる。

しかも、生徒会副会長を務めている。

なんなんだ、コイツは。


ーーキーンコーン、カーンコーン。


授業終了のチャイムが鳴り響く。

『礼!』

須藤委員長の号令と共に、学生は帰宅するべく散っていく。

「綾瀬君、今日も手伝ってもらっていいかね。」

コブ先の言葉に

「は………はい…………。」

どうも煮え切らない様子で返事をする綾瀬。


いつも笑顔な綾瀬がコブ先に話しかけられている今、恐怖に震えているような顔をしていた。


「綾瀬さん、最近毎日の様にコブ先に呼ばれるわね。」

須藤委員長の言葉に嫌な予感が走る。

やはり俺の睨んだ通りか……。

「なぁ、委員長。少し手伝ってくんねぇか?」

俺の言葉に、委員長はキョトンとした顔をする。

無理もない。俺が人にものを頼むなんて事はしないからな。


「いいけど、何するの?」

「アイツ、もしかしてコブ先に何か弱み握られてんじゃねぇか?」

「綾瀬さんが!?それはないでしょ。」

「だからそれを確かめに行くんだよ。二人の後をつけるぞ、来い!」

俺達はコブ先達の後ろを少し離れながら歩いて行く。

最近、良くないことを耳にする。

コブ先が生徒達の弱みを握り、その生徒達の身体を弄んでいると。


ヤツがやろうとしてるのは恐らくは売春行為。

今までも何人かから、そういった行為をされたという話を聞いた事がある。

許すわけにはいかねぇ。


「こっちって、旧部室棟だよね。確か今は誰も使ってない……。」

「こんなトコあったんか。ヤニ吸うには持ってこいの場所だな。」

「ダメだよ!未成年でしょ!」

声を荒げる須藤の口を塞ぐ。

「アホか、バレるだろうがよ!」

俺は旧部室棟に向かう二人を柱の陰からそっと覗くが、バレていないようだ。


「委員長、大体の予想は出来たぜ……。」

俺の嫌な予感は今まさに当たりそうだった。

「二人が部室棟に入った!バレないように近づくぞ!」

俺達は姿勢を低くし、旧部室棟に侵入する。

「確かここは随分前に閉鎖されて、教師も生徒も立ち入り禁止のハズなんだけど……。」

「委員長、スマホの動画で二人を撮ってくれ。」

「わかった。」

委員長はスマホを取り出すと動画撮影していく。


そっとドアを少しだけ開け、動画を撮影し始める委員長。

委員長も女性だから気が進まないだろう……。

だが、万が一何かあったら俺が真っ先に飛び込まなきゃいけないからな。

「すまねぇな、委員長。」

俺は委員長の頭を軽くポンポンと叩く。

「う………うん。」

うつむき加減で頬を掻きながら委員長は引き続き動画を撮影する。


やはりそこには制服を脱がされる綾瀬の姿が映っていた。

「いいねぇ!この身体が僕の物になるんだ!」

コブ先が綾瀬の胸に手を伸ばそうとした瞬間に、俺は無意識の内にコブ先に飛び蹴りをかましていた。


ーーやっちまった。


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