第4話

4人の意思が一致したところで、また様々な事について話し合った。

カルコスの村の疫病については、ヴィオレが情報を集め解決策を探る事。

拠点はヴィオレが住まわせてもらってるこの都市にある寂れた古町の宿にする事など。

途中、サプリを口にしながらネロは夕焼けに染まる都市の一望を眺めていた。


「でも、ホントこの街は色んな建物があるんだな〜!あの遠くにある変な棒みたいなのも建ってるし!」


「あれはイリスタワーって言うの。このリングの通信機能は全部あそこの電波を介して成り立ってるわ」


イリスタワーは全長500mを超える超高層タワーである。この大都会のメインシンボルである。


「ヌヌ…、見てみるとあそこの建物も塀があってかなり広さがあるぞ!」


「あそこはアイティオピコン大学。私の母校ね。あなた達に分かるように説明すると学び舎。あそこを卒業した人は大体、政府やオール社など有名な企業に就職するわね」


「政府…?」


ロートが首を傾げる。オール社の存在は聞いていたが、また新たな単語が出てきた。


「この世界を統治するもの。まぁ言うなら人々のルールを決めてるところよ」


「なるほど!俺らの村でいう村長みたいなもんだな!」


「まぁ規模は違うけどそんなもんよ。この政府とオール社はズブズブの関係になってる…。オール社の競合他社は大抵政府の圧力で潰されてからね。それと洗脳計画もきっと一部政府の提案でしょうね」


「ま、こういう裏情報は一般の人は知らないけどね」


「…ヴィオレさんはなんでそんなに色々な情報を知ってるの…?」


ヴィオレがオール社に対抗する理由付けとしては、他にも彼女が情報通というのもあった。

彼女は様々な人脈からの情報を精査していき、そして自ら行動して秘密を明らかにする習性も持っていた。


「情報を知らないと私たちは行動一つ一つに理由がつかない。情報は宝よ。」


「ふーん、じゃあ俺らがこれからぶっ飛ばなきゃいけない奴らの情報も知ってるのか」


ネロが本題に戻した。


「…ごめんなさい。裏オール社は本当に極秘で活動してるからほとんど情報が得られないの…。だけど一人の情報は得られたわ。」


「ネグロ火山を拠点としているガルセクという名の男。彼は私みたいな能力を扱うの情報がないから、きっとあまり苦戦せずに戦闘不能にできるはず」


「ガッハッハ!!つまり、拳と拳の戦いだな!!それはワシに勝てる者はおらんぞ!!」


「お!?言ったなカルコス!一度俺と勝負してみるか!?」


「はいはい、喧嘩なら人がいないところにしてね」


「…ねぇ、聞きたい事があるんだけど、ヴィオレさんはどんな魔法が使えるの…?」


ロート自身、リングを付けているものの全く能力など知らない。

今後役に立てるかと思い、ヴィオレに思い切って聞いてみた。


「…私たちはあなた達を仲間と信じるから話すわ」


「そうだ!会って間もなくともワシらはもう仲間だ!!そうだよな!ネロ!ロート!」


カルコスがそう言うとネロとロートも頷いた。

この4人は既に絆ができ始めていた。


「分かった。能力の話をするのは仲間の信頼がないとできないから改めて聞いたわ。ありがとう。」


「私の…この紫色のリングの能力は毒。致死量に達するほどの毒を出す事も出来れば、人を動きを封じる程度の毒も出す事が出来る」


「それによって私の体液は全て毒よ。謝って私の体液に触れたら痛い目にあうわよ」


すると、少し彼らは引いてしまった。


「まぁそういう反応しても仕方ないわよね…。でも安心して、今やあなた達はこのサプリ見える微量の毒が入った薬を飲んだから」


ヴィオレが手にしたのは先ほどネロや他2人が既に飲んだサプリであった。


「「何してんの!?」」


慌てた様子で各々が口に手を入れたり、腹を叩いたり、もう諦め沈んでいた。


「いやいや!安心してって言ったでしょ。あなた達には害はないの!微量な毒を体内に入れる事で免疫が作られるだけだから!」


3人はすごく微妙な顔をした。


「さっき仲間って言ったのに!…まぁわたしも勝手にサプリを入れ替えたのは悪いけど…、そうでもしないの飲んでくれなさそうで…」


ヴィオレは彼らが外を眺めていた間にこっそりサプリを毒入りの薬に差し替えていた。


(…ヴィオレさん、敵に回したら怖いかも…)


そんな事をロートが思っていた最中、何か店のフロント辺りが騒がしいのに4人が気付いた。


「んー?なんだ、なんか揉めてるぞ?」


どうやら店を出ようとした高そうな服を着た男の服の裾を痩せた貧相な女が力弱く引っ張っていた。


「〜ッッ!!」


個室越しでは何を言っているのか分からない。

すると、突然何かの力で女性は勢いよく壁まで飛ばされた。

そのまま壁に当たりへたり込んでしまった。


「おい!これただ事じゃないぞ!助けるぞっ!!」


「ちょ、ちょっと待って!今から下に下すから…」


ネロはヴィオレの声を無視して個室の扉を無理やりこじ開けた。


「カルコス行くぞ!!」


「ガッテン!!」


2人はまだ浮いてる個室から10mの高さまで飛び降り無事着地した。


「…あいつらはやっぱり頭おかしい…」


「…力はあるんだけどね…」


ヴィオレは頭を抱え、ロートは苦笑いをしていた。


ネロはすぐさま女の元へ行き、抱き抱えた。


「おい!お前!!大丈夫か!!」


「…あ…あの人が…私の息子を…殺した…」


女はなんとか声を振り絞ったがとても弱々しくなっていた。

すると男はニヤニヤしながらこう答えた。


「いやいや、私は何もしていない。ただ私の大事な息子に汚らわしい「地下」のガキが近づいたんでね…、業者を呼んで始末を依頼しただけだ」


ネロとカルコスが睨みつけるよう男の方へ見る。


その見た方向、男の背後の出口外には緑色のリングを身に付けた少女が帽子で顔を隠しながら立っていた。

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