Or rings ーオール リングスー
思後 的世(シアト マトヨ)
プロローグ
プロローグ
人間の思考や感情はあるべきか否か。
ふと、そう考える事がある。
私は生きていて人間の卑しい思考や行動、そして悲しみ苦しむ感情ばかり目にする。
生物は同種族であれば皆生まれたころは平等だ。
しかし、人間だけは生まれたころから平等ではない。
人間のみに作られたヒエラルキーのピラミッドで位置付けられている。
ピラミッドの頂点にいる人間は卑しい思考や行動、底辺にいる人間は悲しみ苦しむ。
だが、ここ近年で社会も変わった。
見知らぬ他者と関わることができる情報化社会に変化した。
そのため、ピラミッドの底辺にいる人間は匿名で頂点にいる人間に非難を浴びせられる。
結局のところ、人間は誰しも人を見下し蹴落とさないと気が済まない生き物なのだ。
それならばいっそ、人間は動物のように思考や感情を消して、進化のない更地で細々と生きてほしい。
戦争も犯罪も自殺もない
そんな世界に変えていこうと思う。
ーーーーーーーー
「この本は検閲にひっかかるなぁ」
そう言いながらタバコの火を消し、赤い髪を無造作にかきながら彼は立ち上がった。
大都市カエルレウム。
そしてここは大都市の誰も訪れない寂れた図書館。
「でも、作者のぶっ飛んだ思考はとても面白い。 人も来ない図書館だし政府には黙って隠しとくね。また名も知らない人が書いた本はここに置いといてよ。お婆ちゃん」
図書館司書である老婆は笑顔で頷いた。
男の名は「赤」という意味を持つルージュという。
ルージュはこの世界政府公認の特別パトロール部隊の1人。
つまり、「上」の人間である。
しかし彼はそれをひけらかすことなく、この都市の「地下」の人間にも平等に接している。
「よし!お婆ちゃん、俺また探してくるよ!」
そう言って彼は図書館を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます