第参話 いざ参りました
私、渡部一成は居酒屋で将棋を黙々と指しています。
相手は若林恵太。
毎回この昼過ぎには心待ちしているかのように、行く度対戦する。
これまで数々の勝負を挑んでは負けてきたそれも今日で。王手を決める。
「一成くん、作戦はバッチリかい? 」
「今日こそは負けません」
「いい度胸だ。受けて立つ」
ひとくち、ゴクッゴクッと、手前に置いてあるグラスを手に取り、補給して喉を潤す。それもそのはず。今までの中でも、一番良い手応えを感じる。
さらには「今日こそは」という思いが一手、一手に緊張を走らせる。
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