お嬢様が旅をしてのんびり農家でもやる物語〜自国が嫌になったので旅をしながら逃げ続けます〜こっそり執事がついてくる。
神崎夜一
第1話 始まり
「あの...この国には優しさがありますか?」
中世ヨーロッパ。車や電話が普及してきた時代。建物も進化して、この国の中心には約300メートルを超える時計台が人々を見渡している。行き交う人々は帽子を被って髭を生やしたおじさんや杖をつくドレスを羽織った上品なおばさんやパーマをかけた若い人がたくさん街を歩いている。店のショーケースにはマネキンに着せた服や、時計、おもちゃなどお客様が街を通る時見えやすいように工夫されている。
この街の空気はとても賑やかで親子が手を繋ぎ、笑顔で歩いていたり恋人が楽しく過ごしていたり子供が輝いた目でショーケースの中のおもちゃを眺めていたりしている。
街の坂を登っていき、後ろを振り向いてみると街全体が見渡せ、夕日色に色づいている。遠くを見渡すと夕日色の海が綺麗に波を打っていてこの街の時計台と合わさると凄く幻想的なものを感じてしまう。
気温も夏だというのに暑くなく、波風がこの街を包み込むかのように涼しい。
私はこの国に来ての第一印象はこのようなものだ。
「わかんない」
確かに私が同じことを聞かれても街が優しいのか優しくないのかわからないと言うだろう。
この子供は私の問いかけに答えたらすぐさま両親のところへと帰って行き、子供と両親は手を繋ぎ歩きだす。
「多少は優しいのかな?」
この街の雰囲気を感じるに、優しさが溢れているような気がする。だって誰もが笑顔で楽しそうなのだから。
私は追われている身。いわば逃走犯なのです!
あっ、でもそれだと犯罪を犯しているみたいになるから逃走人?かな?
そう私は逃走人なのです!私の国では相手も選べず、恋愛なんて出来ない誓約結婚というものがあって私の国を豊かにするためとかでよく知らない方と結婚だなんて私はしません。
私のことは私が決めるの!だから私は今旅人をやっています。
ですが、この国に入ってからというもの、つけられているような気がするのです。
後ろや横、建物の影を見ても怪しい人は見つからず私の勘違いかもしれないです。
とにかく私はお金がないので何処かで稼がなければなりません。国ごとに硬貨というものは違く、その国の人物や大切な建物が描かれているので以前お世話になった国の硬貨はここでは使えません。
「おじいちゃん。私、働きたいです」
痩せ細った白髪の80代くらいのおじいちゃん。壁に寄りかかって座り、おじいちゃんの前の木の板には靴磨きと書かれてあった。
「無理じゃのぅ。お嬢ちゃんに渡せるだけのお金は稼げてないのでのぅ。他の所の方がよっぽど良いと思うでのぅ」
「そうですか。残念です...。私も靴磨きに興味があったのにー。うーん、、、他をあたります。おじいちゃんありがとうございました。いつかまたここへ来ます。その時は靴磨いてくださいね」
街の中にひっそりと佇む靴磨き屋さん。おじいちゃんがずっと頑張って来たんだと伝わる。
私はこういう所で働きたかった。
よく考えたら私は足手纏いにしかならない。
靴磨きなんかやったことないし、あること自体忘れていた。
お客様と触れ合って、汗水流して働くのは良いと思ったが残念だった。
でも、おじいちゃんは常に笑顔で接してくれて、だったら、私も落ち込んでられなかった。
「その時は長年の靴磨き技術を披露するのでのぅ。是非来てくれのぅ」
「えぇ!絶対来ます!」
私は笑顔でそう答え、歩き出した。
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