第7話 新たなる可能性

 

 今日は、良い日だ。

 なぜなら、念願の剣がやっともらえるのだ。

 それもそのはず。

 俺はここ最近ボロイ剣しか見てこなかった。

 それが、良い剣になるのだ。

 興奮でいっぱいだ。


 師匠との修行も今日で一か月。

 この一か月は走り込みなどの基礎トレーニングばかりであったものの、今日からはやっと剣術である。

 その為、俺は師匠とともに師匠の持つ剣の中から俺にあうものを見つけるため今日は家の中である。

 師匠に師匠の流派について聞くと俺の国などにある剣術とは大きく異なっているらしい。

 まだ教えては貰っていないが。

 だが、予想はできる。

 恐らく、あれを使っていると思われる剣術に思いをはせウキウキワクワクしている。


 「アキレス、剣を選ぶから鍛冶部屋に来なさい。」


 「はい!」


 おぉ、遂にか。

 ついに私はこの世界でも初めて見るあれを手に入れるのか!

 ウキウキしながら速足で鍛冶部屋へ向かう。

 私も武器商人としてあれを売買していたが、やはりあれはいつ見ても興奮するというものだ。

 因みに鍛冶部屋は主に武器の整備をするところ。

 なんと師匠は武器の整備も一人でこなす。

 剣士にしては非常に珍しいタイプだ。

 そんなことを考えている間にもう鍛冶部屋についた。

 ふうぅ、緊張する。

 そう思いながらも、バッとドアを開ける。

 そこは、どことなく鉄の少し鼻に付くにおいをした部屋だ。


 鍛冶台には布に包まれたあの形状をしたものがあった。

 

 「おっほん。では、アキレス。まず説明しよう。この武器について。」


 そう師匠は言い、布をとる。そこには二本のあれ。

 それはまさしく、前世でも何度か見た刀だった。

 

 「この武器は刀という。これは剣のようにたたっ斬ることを目的にして作られたものでない。切り裂くことを目的として作られておる。そのため刃は鋭いが未熟な者が使うと刃が折れる。お主は、走りなどを見ておっても体の芯がしっかりしとる。お主なら大丈夫と判断してこの剣を渡す。それを心して励むのじゃ。」


 「はい!」


 まさかこの世界でまた刀と出会うとは。

 しかもこの刀、刃がかなり綺麗である。

 前世であれば最高値が付くほどに。

 しかし、その中に感じる幾人もの人を切り裂いたであろう何か、そんな気がする。


 「・・・・・師匠、この刀は誰かが使ったことがありますか?」


 そう聞くと師匠は驚きで目を見開いた。

 

 「なぜそれが分かったのじゃ?」


 やっぱりか。

 まさか前世でそういうものを幾つも見てきたからなんて言えるわけがないのでごまかす。


 「何か、勘がしたもので。」


 そう言うと、少し疑いながらも師匠は納得する。

 この人、勘は常人の何倍あるかもわからないほどに鋭い勘を持っている。

 俺も、欺けているかどうか心配になる日々だ。

 そんな俺の気を知りはしない師匠は俺の疑問に答えてくれた。


 「アキレスの言う通り、この刀はわしの流派が引き継ぐ刀であり、これまでこの流派を紡いできた者たちが使ってきた刀じゃ。それは総勢7本ある。しかし、歴史の流れによりここにはわしのを含め三本しかないがのぉ。」


 そんな名刀だったのか。

 道理で、あそこまで刀身がきれいなわけだ。

 

 「触っても、いいですか?」


 「もちろんじゃ。しっかり刀の声を聴くのじゃ。そうすれば、おのずとお主にあった刀がお主の手にわたるじゃろう。」


 「だは、遠慮なく。」


 まず一本目から。

 この刀は刀身が澄み切っている。

 不純なものを嫌うかのような、清楚なる刀。

 という気がする。

 それに少々軽すぎる。

 刀としては、女性や、技巧派向けのものだろう。

 俺には向いてないように思う。


 そして、2本目の刀に行く。

 こちらの刀身は荒々しい。

 いや、荒々しさの中に繊細さがある。

 まるですべてを切り伏せようとするかのようなその刀身に圧倒される。

 

 『オレヲ・・・・エラベ・・・・』


 っっっ!

 刀がしゃべった?

 低めの男?の声か?



 「師匠、刀がしゃべりました。これは、どういうことですか!?」


 そう聞くと、師匠は驚いたように片目を見開く。

 

 「まさか、本当か?確認じゃが、それは男の声かの?」


 「はい。俺を選べと言ってきました。」


 そう言うと、師匠は笑い出した。

 それは嘲るような笑いなどではなく、感心したという笑いに聞こえる。


 「お主は、その年にしてその『荒鬼』に認められたか。それは、それはまことに愉快じゃ。その刀をまともに使えたのは初代様だけと聞く。お主はそうなってくれるなよ?」


 「はい!」


 しかし、そのような荒々しい刀だったとは。

 しかし、この世界の名のある武器は決まって人を選ぶ。

 この世界での武器商人というのは生きずらそうだと思う。

 

 「では、この刀のしっかりとした説明を行おうかのぉ。」


 「お願いします。」


 どんな武器にもルーツがある。

 それは何かの物語だったりってのがほとんどだ。

 俺はこの刀が背負っている物語がひどく気になった。

 それは、俺の新しい武器ということだけが関係しているわけではないと思う。




 アキレスに希望が見えるまであと3分


 

 

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