審判の日(後)
「あやめちゃん、今日は遅かったけどどうしたの?」
放課後、ふたりだけになった教室でみいなは尋ねる。
「ちょっと病院に行ってて」
「病院!?大丈夫?どこか悪いの?」
手足をバタバタさせて慌てふためくみいなをあやめがどうどうと落ち着ける。
「大丈夫。ケガも病気もないから安心して」
「よかったぁ~。でも、どうして?」
あやめは目を閉じ、息を大きく吸って吐くその間に気持ちを整える。
「――あのね、死後の世界診断、してきたの」
「え、すごい。どうだった?」
「電極がいっぱいついてる変な帽子かぶらされて、それで、」
あやめの言葉が途切れる。
「それで?」
みいなは興味津々に続きを促す。あやめは呼吸を整え、声が暗くならないようにつとめて話した。
「泥でできた人間にお前が悪いって言われて、逃げても逃げてもドロ人間がいて、それでも逃げて、そしたらみいなちゃんがいて、」
「ん?わたし?ちょっとごめん。なんの話?」
普通に話が見えなかっただけかもしれないけど、あやめには無理に続きを話さなくてもいいというみいなの心遣いに思えた。
「あ、そうだよね。えっと、臨死体験?したときにそういうのが見えて」
「臨死体験!?いっかい死にかけるってことでしょ?そんなことするんだ」
「そうそう、帽子かぶらされた後、幻覚見るかもしれないけど暴れるな。最悪死ぬぞ。って言われてヤバいとこ来ちゃったなって思った」
なにそれ、ってみいなは笑う。
「それでね、まー地獄みたいな結果だったんだけど、死後の世界は生きてるうちに変わるって言ってて、ちょっと損した気分。26,300円もしたんだよ」
あやめの頬を涙がつたう。自分に大丈夫だと言い聞かせてたけど、やっぱりダメみたいだ。
「大丈夫だよ」
夜が空を覆い始めている教室で、みいなはあやめの背中に手をまわす。
いつもはあやめが抱く側なのに、逆にみいなに抱かれてしまって、いよいよ本格的に涙があふれてくる。
「ごめんね。ほんとは、あのときもうネットの診断やってたの。でも、いっつも地獄ばっかりで……」
うん。うん。とみいなは優しく相槌をいれながら背中をぽんぽんしてくれる。
こういうところは本当にかなわないなとあやめは思う。本当に、いつも助けられてばっかりだ。
「ありがとうね、あやめちゃん。わたしに教えてくれて」
「約束、したから……」
あやめを抱くみいなの力が強くなる。
「ちょっと痛いよ。みいなちゃん」
「あやめちゃんが、悪いんだからね――」
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