第13話:権謀術数

「ほう、いったいどんな問題があるんだ?」


「ゲセルト王太子が正室にしたいという女が、チャント王国の第一王女ミケルネなんで、これを無碍に拒否すると、外交問題になるかもしれないって話でさ」


 なるほど、そういうことか、要は国家間の謀略か。

 チャント王国は王女を使ってゲセルトを誑かし、レントン王国から富を奪いとりたい、レントン王国にチャント王国の血を入れたいという事だな。

 そうなると、ビリゼブ国王陛下もうかつには動けない。

 バガン王家も、自国をチャント王国との戦争に巻き込んでまで、ゲセルトの結婚問題に介入するかどうか……


「それと、婚約破棄されたジャンという男の実家ですが、コロンビア侯爵家という名門貴族なんですが、このままでは跡継ぎのジャンの魔力不足で、男爵家に降格されかねないってんで、ジャンを処刑して王太子が追放刑にした長男を家に戻すようです」


「ほう、長男が見つかってから殺すんじゃなくて、見つける前に殺したのか?」


「はい、よほどジャンが憎かったようで、皮剥ぎの刑の後で八つ裂きの刑にして殺したそうです」


 なるほど、王太子のお気に入りのうちは、家の安泰のために我慢していたが、寵愛を失った以上、殺しても大丈夫という事だな。

 だが、俺を家に戻すとなると、王太子に処分を撤回させなければいけない。

 ジャンを婚約破棄する時に、その交渉をしたのだろうか?

 それとも、もう王太子に遠慮せず、いや、遠慮どころか、廃嫡や処刑を決意しての事なのだろうか?


「それと、コロンビア侯爵家は国王に味方して王太子を殺すそうです。

 その為の国内貴族への根回しもすんでいるようです。

 王太子が女を、それも他国のひも付きを妃に望んだ事で、多くの貴族が同意して、戦の準備をしているという噂です」


「ほう、随分面白い話を知っているんだな、これは一杯どころか好きな酒を好きなだけ飲んでもらわないとな。

 親父さん、この男の注文は俺持ちで頼むよ」


「おう、分かったよ、兄ちゃん、一番高い酒を飲んでくれや」


 親父さんが、金儲けのいい機会だと、情報屋に高い酒を勧めるが、親父さんは正直者だから、安酒を出して法外な金を要求したりはしないから、安心して任せられる。

 それにしても、戦争を覚悟しての準備という事は、内戦だけではなく、チャント王国との戦争も視野に入れているのだろうな。

 これは面白い、こちらから人殺しをする気などなかったが、侵略してくる連中になら、遠慮なく最大魔法をぶっ放せる。

 自分の力を確認するにはいい機会だ。


「無理矢理徴兵され、嫌々戦わさせられる民を殺しちゃいけないぞ」

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