第1章➀
「俺には前世の
はじめましてのご
場所はお城の中庭、向かいの席でドヤ顔を
想像してほしい。
さて──非常にロマンティックといえなくもないこのロケーションで、金髪碧眼の王子様は
「失礼いたします」
フリーズした私に、給仕の少年が小皿に取り分けたチョコレートケーキを運んできてくれた。ラズベリーソースが白いお皿に
「わあ、美味しそうね。ありがとう」
思わずお礼の声もはずむというものだ。半分くらいは現実
少年は私のテンションを目礼で受け止めて、音もなく
「きいているのか?」
「え、あ、はい。ケーキ、美味しそうですわね?」
「菓子のことは後でいい」
うーん、気を
「……、ゼンセのキオク、でしたかしら?」
「そうだ、意味がわかるか? ここに生まれる前、違う人間として生きていた記憶だぞ」
「それは、興味深いお話ですわね?」
五度ほど首を
常識的に考えて、うさんくさい『前世の話』を初対面の
「興味深い、と言ったか?」
「ええ、この世界に生まれる前の記憶があるなんて、不思議なお話ではありません?」
だけど大変
打ち明けるつもりはさらさらないけれど、実は私にはいくらかのアドバンテージがある。
「不思議……、そうか、考えてみれば不思議な話だ」
王子様が考え込んでいる
「
思いきってそう
でもね、よほどのご不興さえ買わなければ、私には失うものはない。
「……俺は、異国に生きていた」
「この国ではないのですか?」
「違う。そこでは小国が乱立し、領土を広げようと争っていた。俺は、そんな小国の領主だった」
「前世でもやっぱり王子様でしたのね」
「小さな国だ。だが俺は戦乱を
「まあ、ご立派です」
「実際、我ながら良いところまで行ったと思う。天下統一まであと少しだった」
ええっ、ホント? 話が出来過ぎじゃない? もしかしたらユージィン様の
「だが、その野望は達成目前で裏切りにあい、俺は不意の
「裏切り?」
「そうだ。
……あれ、なんかその話、知ってるかも?
天下統一寸前で部下に裏切られ、
「……あの、ユージィン様は、前世ではどんなお名前でしたの?」
「は、それを訊くか」
「殿下のお話があまりに興味深いので、つい。
「かまわん。前世の名前を訊いてきたのは、お前がはじめてだ」
そうかもしれませんわね。
「
「ええ、
むしろ
「前世での俺の名はノブナガ」
「のぶ、なが……?」
「そう、オダノブナガといった」
────王子様の前世は
うすうす予感はしていたものの、いざその名前が出た
それからお茶会が終わるまで、変わり者で気難しいと評判の王子様は終始
それにしても……、まさか、王子様が、〝お仲間〟だなんて。しかも王子様の〝前世〟は〝織田信長〟って。なんだろうこの格差……!
そう──、私ことアリア・リラ・マテラフィも、実は前世の記憶を持っている。
とはいえ、王子様のように
はじめて思い出したのは、ほんの子どものころのこと。お
どこかの国、どこかの
それが〝前世の私〟の
もちろん前世の話は基本的に秘密。確実に頭がおかしくなったと思われるもの。そう
我が国の王子様が、まさかの前世持ち。
しかも元・織田信長……織田信長だよ?
第六
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