大学生とナポリタン

「そろそろいいかな」


 舞先輩の手が空くまで未来と話し十五分ほどたった頃、ようやくお店もちらほらと空席が出始め注文することにした。


「お待たせ二人ともー! 遅くなってごめんねー」

「いいんですよ、先輩こそ忙しそうですけど大丈夫ですか?」


 先輩は額に汗を浮かべていて目に見えて疲れている。 いくら客足が減ったとはいえこのままでは倒れてしまいそうだ。 あのゴリラは一体何をしているんだろう。


「私はいいんだよ。 それに君たちだって随分と疲れてているようじゃないか」

「やっぱり先輩にはバレますか。 あんまり無理はしないでくださいね」

「もちろんさ!」


 俺はナポリタン、未来はカルボナーラと食後にパフェを頼んでいた。 一体その体のどこに俺よりでかい胃袋があるというんだ……


 未来にそのことについて尋ねると毎回別腹だからと言われる。 女子の別腹とは本当にもう一つの胃袋があるのではないかと思ってしまう。


 未来と別腹についてどこまでなら入るのかという話をしているとタイミングよくナポリタンとカルボナーラが運ばれてきた。 どちらも美味しそうに湯気を放っている。


「「いただきます」」


 そう言うと俺と未来は家のようにスパゲッティを勢いよく啜る。 ここは店の奥の席ということもあって周りからも見えづらいので人目を憚らずに食べられる。


 やはりメナージュのナポリタンは美味しい。 俺の中でカレーの次に好きかもしれないほどだ。


「つっくん、ちょっと頂戴ー」

「じゃあ俺もカルボナーラちょっともらうな」


 未来は頷くと俺の皿に乗ったナポリタンを遠慮なくフォークに巻き付け一気に啜った。 あっけにとられる俺だったが反撃しようとフォークを未来のカルボナーラに向けると未来にガードされてしまった。


 いや、そっちが食べたんじゃん。


「ちょっとだけだよ」

「人のを勢いよく大量に食べておいて?」

「うん」


 はあ、とため息をつきつつ俺は未来から少しだけカルボナーラをもらう。 明らかに未来にとられた分塗料が違うがあきらめることにした。


 全然根に持っていないけれど明日から未来は一週間アイス禁止にしよう。 全然根に持ってないからね?


 ひとしきり食べ終わり待ったりしているとパフェを持った舞先輩が未来の隣に座った。 そして俺に前にコーヒーを置く。


「とりあえず二人だけになったから休憩をもらって来たよ。 コーヒーはサービスねー」

「ありがとうございます。 メナージュもフロアが一人だと大変じゃないですか?」


 こんな小さな先輩一人で回せるほど狭いわけでもないのによく頑張っていると思う。


「いいんだよ、私の両親がやっていることだしカッコ悪いところをゆう君に見られるわけにもいかないしね」


 先輩は二カッと笑うと自分用に持ってきたお茶を一気に飲み干した。 やっぱり先輩はすごいなと思いつつサービスのコーヒーに口をつける。 俺好みのブラックだった。


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