大学生と水着

「あれ? つっくん水着は?」


 先輩とひとしきりはしゃいだ未来が海の家まで戻ってきて訪ねてきた。 戻ってくる頃には全身濡れていて水が滴っている。


「海なんて聞いてなかったから持ってきてないって…… それに未来だっていつ水着を買ったんだ?」

「これは去年買った奴かなー。 ほんとは今年も買いたかったんだけどね」


 なんで海に行っていない去年に水着を買っているのかは置いておいて、女子はそんなに水着を買うものなのだろうか。 いまいち理解できない……


「と言うかつっくん、海の家に水着って売ってるよ?」

「え、まじで?」


 俺はもう一度海の家の中を見渡してみる。 すると端の方に何着か釣り下がっているのが目に入った。


「ほんとだ。 でもお金がもったいないからやめておくよ」

「えー、せっかく海まで来たんだから一緒に泳ごうよー」


 未来は売っている水着の一つを手に取って俺に差し出してきた。 しかし俺は泳ぐ気もないし、お金もあまり持っていないので丁重に断っておいた。


 その後、海の家の外でシュンとしている未来の隣に座ってお詫びとしてラムネを渡した。


「こんなので機嫌が直るとでも?」

「俺は未来の水着姿が見れただけで来た甲斐があったと思ってるぞ」

「むう、ずるいよ……」


 二人仲良くラムネを飲みながら海を眺める。 たまに見覚えのあるバカップルが目に入るが気にしないことにした。


「ところで母さんたちは?」

「着替えた時に私に先に行ってとだけ言ってたよー」


 未来は俺の肩に頭を乗せて海を眺めている。 どうやらはしゃいだ分疲れたようで少し眠いみたいだ。


 ちなみにさっき先輩と海辺で遊んでいたから寄りかかられると砂や海水がついてしまっている。 はあ、シミとれるかな……


「あ、母さんたち」

「ほんとだー、やっぱり仲いいねー」


 見知ったバカップルの近くに父さんと母さんがいた。 二人は波打ち際で座って海を見ていた。


「邪魔しちゃ悪いしこのままでいよっか」

「そうだな」


 そのまま未来は俺の肩に頭を預けながら寝てしまった。 朝早くから移動と海だからな、疲れてもしょうがない。


「ただ動けないんだけど……」




 *




「そろそろ起きろー」


 未来が寝てから約一時間が経ち、母さんと父さんが手振りでもうそろそろ行くよと言っているので起こすことにした。


 未来はすうすうと気持ちよさそうに寝ているのであまり起こしたくはないのだがしょうがない。 俺は未来の頬をツンツンしてみたり肩を軽く叩いてしてみたが起きる気配がない。


「起きないと今日のお昼ご飯抜きなー」

「ごひゃん!」


 あ、起きた。 


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