大学生と替えのシャンプー

「なあ未来」

「なあーに?」


 メナージュからの帰り道。 もはや真っ暗になった道を歩きながら俺は未来に尋ねる。


「俺たち高校の頃とやってる事変わらなくないか?」

「うーん、言われてみればそうかもね。 でも大学生らしいことってなんかあるの?」


 言われてみれば大学生らしいことか。 旅行に行くのは…… 高校の頃からやってるな。


 歩きながら考える。 今思うと高校時代からなかなかに大人な生活していたからな…… 


「つっくん、いいんじゃない? 私たちは私たちらしくで」

「それもそうだな」


 結果、俺たちはこのままで。 って、なんも解決してねえ! ただいいように言いくるめられただけじゃん!


 *


「そういえば私が杏ちゃんの家に行くときにお土産持っていけば良かったね」


 家に着きソファにダイブした未来は思い出したかのように言う。


「また今度でもいいんじゃないか? それに今日は杏樹や先輩にお世話になったんだしうちにでも招こう」

「それいいね! じゃあうどんパーティだ!」


 冷凍庫にパンパンに入ったうどんを早く消費したいしうどんパーティもありか。 俺と未来はもう飽きてきてるんだけどな。


 あ、杏樹にカレーを持ってきてもらってカレーうどんもありだな。


「それじゃあ私はお風呂行ってくるー」

「行ってらー」


 俺が蘭ちゃんに拉致られてた時にはお風呂の準備までしてあったのか。 流石は未来、用意周到すぎて怖いくらいだ。


 俺は暇だし次の話のプロットでも作っておくか。 また編集さんに迷惑をかけないためにもな。


 ティロリン


「ん? なんだ?」


 お風呂から呼び出しがあった。 お風呂場の方から「つっくーん! たすけてー!」と聞こえてくる。


 バスタオルでも忘れたのか? いや、さっき準備していたはずだ。 じゃあなんだ?


「どうしたみら」


 洗面所の扉を開けると一糸まとわぬ姿の未来がおりもじもじしていた。


 俺は勢いよく扉を閉め、リビングに戻る。


「ちょっとつっくん!? 待ってよー! シャンプーが切れただけだってー!」

「何だそういうことか。 それを先に言ってくれ」


 俺は洗面所を出たところにあるクローゼットから詰め替え用のシャンプーを取り出す。 


 それにしてもなんで未来は一旦洗面所まで出たんだ? 俺を呼んだんだし風呂場で待っていればいいものを。


 まさか、裸を見た俺が何かするのを期待しているとか!? 待て俺! それは一番ないだろ……


「ほら未来、替えのシャンプーだぞ」


 洗面所の扉を少しだけ開けてシャンプーを持った腕を入れる。 これなら未来の裸を見ることもなく渡せるだろう。


「……ありがとつっくん。 えい!」

「え、ええええ」


 突然腕を引っ張られ俺は洗面所に入ってしまった。 そこにはやはりタオルもまかず生まれたままの姿でいる未来がいた。


 俺どうなっちゃうの!?

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