大学生とカレー

「紗月にいはまだ未来ちゃんと付き合ってるの?」


 炎天下の中、スーパーに向かっていると蘭ちゃんおもむろに聞いてきた。


「まだ付き合ってるぞー。 そのうち結婚するかもな」

「むう、紗月にいは一途なんだね」


 そう言う蘭ちゃんは少し寂しそうな顔をしていた。


「確かに未来とくっつくかもしれないけど、杏樹や蘭ちゃんと遊びぶのも大歓迎だよ」

「うーん、それは嬉しいんだけど未来ちゃんに合わせる顔がなー」


 それを気にすることができるようになったあたり、ちゃんと大人になったなと感じる。 でも杏樹や蘭ちゃんにはそういうことを気にせず接してほしいのも本音だ。


 ううむ、どうしたものか。


「蘭ちゃんは高校生になったんだしピンク色の出来事の一つや二つくらいあるんじゃないの?」

「私は紗月にい一筋だからなぁ」

「へえー」


 ん!? なんか今凄いこと言わなかったか!?


「蘭ちゃん!? 今なんて!?」

「もう言わなーい。 それよりほら、スーパー見えてきたよ?」


 彼女が指さす先には俺や杏樹もよく行く馴染みのスーパーが見えていた。


 今考えると蘭ちゃんと買い物に行ったことはないんだよな。 俺が高校生の頃に花火大会に行ったっきり二人で出かけることもなくなったし。


「紗月にいは何を買うの?」

「俺はアイスと……」


 なんだっけ? まあ、カレーの具材を買って帰ればいいか。


「もしかしてカレー?」


 なんでわかるの? エスパーなの?


「そうしようかなって思ってたんだけど……」

「ならうちにおいでよ。 今日はカレーの日だから」


 杏樹の家のカレー。 それは高校時代から毎回食べに行っていた至高のカレーで、俺が食べてきた中で一番おいしいと胸を張って言える。


 そんなカレーの日にお誘いいただけるなんて蘭ちゃんはいい子だな。 アイスでも買ってあげようかな。


「俺は行きたくて仕方ないんだけど未来に聞いてみないことにはな。 餅になっている未来が家から出てくれるかも気になるし」

「じゃあ未来ちゃんに電話だー!」


 そう言うと蘭ちゃんは俺のスマホをぶんどり慣れた手つきで未来に電話をかけ始めた。


 なんで俺のスマホなのにアプリの配置を知っているんだ? これも現役女子高生の力なのか?


「あ、未来ちゃん? お久しぶりですー、突然だけど紗月にいは預かったから一時間後にうちに来てね」


 その説得の仕方なら未来は絶対に来るな。 説得というか脅迫だけど。


「これで何も問題ないですし材料を買って早く帰りましょう! ね、紗月にい!」

「わかったよ、俺が行くからには大量に作ることになるぞ」


 少なくとも三回はおかわりするからな。 意外と小食なんだよ、悪いか。


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