デイシフト 1
そこはどこにでもある田舎のコンビニ。
県道から逸れた場所にあるので客はたまにしか来ず、故に店員は暇を持て余していた。
時刻は午後四時前。
二人のセーラー服を着た少女が少し離れた場所にある高校から自転車でやって来た。
その内の一人が自転車を店の裏に止めるとスカートを翻し、慌てて走り出す。
「やばいやばい! オノセンの話が長いせいで遅刻しちゃうよ~」
明るい色のセミロングヘアを揺らし、愛沢ゆうなはドタドタと走った。角を曲がり、店の中に入っていく。
その後ろからもう一人の少女が静かに追いかけていった。
「おい。ゆうな。店内で走るな」
田神聖はゆうなと違い、店の中では早歩きになった。
先にいる店員に会うと礼儀正しく「こんにちわ」と挨拶をする。
聖はポニーテールに大きなネコ耳のカチューシャをしている。落ち着いていて、一見高校生には見えない。
聖の声を背中で浴びながらゆうなは従業員室のドアを勢いよく開けた。
「だって遅刻したらその分お給料が減るじゃん!」
「そこじゃないだろ。迷惑かけたらとか思わないのか?」
「そんなこと思って生きてられっか!」
ゆうなは急いでセーラー服を脱ぎ、ロッカーから制服を取り出した。
「おい! せめて閉めてからにしろ!」
まだ聖はドアを開けたままなので客からは丸見えだ。
顔を赤くし、慌ててドアを閉める聖だが、今店内にいるのは前のシフトのおばちゃんだけだった。
「聖も早くしないとお給料減っちゃうよ!」
ゆうなはなんとか制服を着たが胸元のボタンは閉じられておらず、可愛いピンクの下着が見えている。
一方の聖は慣れた様子で制服を脱ぎ出す。
「減ったって何十円だから別にいいよ。わたしらは学生だから学校の事情で多少遅くなるのはオーナーさんも分かってるし」
「バカ聖! 十円あったらうみゃい棒が買えるんだぞ! 聖はうみゃい棒を捨てることができるの?」
「できるよ」
「ひどっ!」
駄菓子が好きなゆうなはがーんとショックを受け、その間に時間が進んだせいで結局二人は遅刻扱いとなった。
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