鬱ゲー転生。 知り尽くしたギャルゲに転生したので、鬱フラグ破壊して自由に生きます【旧題】泣きゲーの世界に転生した俺は、ヒロインを攻略したくないのにモテまくるから困る――鬱展開を金と権力でねじ伏せろ――
第149話 俺の幼馴染と婚約者と任侠娘と無口っ娘が修羅場っている(1)
第149話 俺の幼馴染と婚約者と任侠娘と無口っ娘が修羅場っている(1)
やがて、姿を現す軍用ヘリ。
すぐに俺たちの頭上へと到達したそのヘリのドアがガラララッっと、小気味いい音を立てて開いた。
次の瞬間、ピチピチ黒スーツに身を包んだ少女が、大空へと身を躍らせる。
パラシュートはつけていない。
彼女にはそんな物必要ないのだ。
少女はクラウチングスタートする陸上選手のような格好で、音もなくぷひ子家の前へと着地を決める。
「……16:24、目標地点に到達。ターゲットを発見。……これより任務を開始する」
ダイヤちゃんが立ち上がり、無表情のまま装備したインカムへと呟く。
科学的に計算された完璧で精緻な美貌が、沈み始めた太陽に照らされて輝いている。
「あー、ダイヤじゃないっすか! どうしたんっすか? こんな田舎まで。確か、外国のどこかに長期出張とか言ってなかったっすか?」
「……成瀬祐樹の婚約者になりに来た」
「えー! なんすか! それ! マスター、ダイヤにもツバつけてたんっすか! ダイヤでいいなら、小生でもいいじゃないっすか! 小生だって、ダイヤと同じヒドラっすよ!」
虎鉄ちゃんが俺のうなじに頬をやたらと擦り付けてそう主張してくる。
ヒドラ云々は一応、機密情報だからぷひ子の前で言わない方がいいと思うんだけど、まあ、今更か。
「……キャッツアイも任務?」
「そうっす! 小生は、マスターとくっついて、組を盛り立てていきたいんっす!」
「……現行の日本国の法律において、重婚は認められていない」
「小生は別に正妻の立場にはこだわらないっすよ! 愛人でもいいっす! ――そうだ! いいこと思いついたっす! ダイヤ、小生と共闘するっす! 一緒にマスターを落とすっす!」
「……任務遂行の障害にならないなら、拒否する理由はない」
「勝手に話を進められても困るよ! ――ダイヤさん。わざわざご足労頂いて悪いんだけど、君との婚約云々の話は、母さんの独断専行でね。俺は承知していないから、研究所に大人しく帰ってもらえないかな」
「……帰還の命令は受けていない」
ダイヤちゃんは眉一つ動かすことなく答えた。
まあ、そりゃダイヤちゃんならそう言うよな。融通効かないところが無口っ娘の魅力だからね! ダイヤちゃんのそう言う所、好きじゃないけど、嫌いじゃないよ。
「そうかもしれないけど、結婚は『婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する』って、憲法24条1項に書いてあること、君も知っているよね? 今回は、俺は君との合意に至るつもりは全くない」
「……なぜ?」
「なぜって……。さすがに、今会ったばかりの人と、婚約する人はいないよ。俺たち、お互いのこと、何も知らないだろ?」
「……知っている。あなたは成瀬祐樹、9歳の小学生。――私はダイヤ、11歳のエージェント。これであなたは私について知った。問題ない」
「いや、そういうことじゃないんだけどなあ……」
俺は困惑気味に頬を掻く。
ったく、二次元の無口っ娘は大好物なんだが、三次元で接するとただのめんどい奴だな。
ギャルゲーみたいに地の文のとっかかりがないと、無口キャラは攻略しづらいんだよ。
「ふう。大体、事情は読めましたわ。――要は、子離れできないユウキのお母さまが遣わした操り人形ということですのね」
シエルちゃんが助け船を出すように口を開いた。
さすが空気が読める子。マジで助かるぜ。俺は主人公として、どうしてもダイヤちゃんにあんまりキツくは言えないからな。
「――お嬢様。ダイヤはスキュラでも最高の使い手です。あまり刺激なさらない方がよろしいかと」
ソフィアちゃんがシエルちゃんを庇うように一歩前に出て警告する。
「ソフィア。忠告には感謝致しますけれど、女には女の退けない戦いがありますのよ。――とはいえ、ダイヤさんには負ける気は致しませんわね。礼儀でも、教養でも、女性としても、ユウキとの絆でもなにもかも」
シエルちゃんは、圧倒的なお嬢様オーラを放ち、ダイヤちゃんを威圧する。
「……」
女子力ゼロの戦闘マシーンであることころのダイヤちゃんが、気圧されたように一歩下がった。
「ダイヤ! 言い負けちゃだめっす! もっと自己アピールするっす!」
虎鉄ちゃんがボクシングのセコンドのごとく、威勢のいい声を上げて応援する。
「……客観的に見て、容姿は私の方が優れている。私の顔と肉体は、美しさの基準となる、完全な黄金比で構成されている。それに比べれば、あなたは歪」
ダイヤちゃんは、彼女自身の彫像めいた美貌を、指でなぞって呟く。
「それは西洋的なものの見方ですわね。東洋人――特に日本人の美意識は、非対称を尊ぶ傾向にありますわ。日本人のユウキの妻になるには、随分お勉強が足りないのではなくて?」
シエルちゃんは余裕の笑みを浮かべてそう反論する。
「……骨格が脆弱過ぎる。産む機械としての役目を果たせるか疑問が残る」
ダイヤちゃんは、シエルちゃんの華奢な身体を一瞥して言う。
「このようなことは大変申し上げにくいのですけれど……、スキュラでさんざっぱら身体をいじくりまわされているあなたが、母体としての健康の是非を語りますの?」
シエルちゃんはノータイムで会心の一撃を放つ。
っていうか、実際、ダイヤちゃんは、普通のヒドラにも増して、遺伝子いじられてるせいで、生殖力は弱めなんだよな。かわいそうだから突っ込まないけど。
「……あなたは戦闘能力がプラナリアにも劣る」
「ふっ、そんなもの、ソフィアや他の執事やメイドが守ってくれるのだから、必要ありませんわ。ワタクシのような人間の価値は、ワタクシのために動いてくれる人の数で決まるのです。そして、それはきっとユウキも同じはずですわ。――そもそも、そんなにただ強い方がお好きならば、ユウキではなく、核発射ボタンとでも結婚なさればよろしいのではなくて?」
シエルちゃんはダイヤちゃんの指摘を一笑に付して、怒涛のラッシュを繰り出す。
「……」
ダイヤちゃんは俯いて黙り込む。
(もうやめて! ダイヤちゃんのライフはゼロよ!)
そりゃ、戦うことしか知らない無口っ娘が社交界を生き抜いてきたお嬢様にレスバで
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