PDP#1 Alien's cell

チャプター1 英雄と根源の復活

“星が降ったあの日、地球は略奪の対象となった。”


「そろそろ最深部だ。準備はいいか?」


「はい。いつでも。」


“その星は突然現れ、地球に向かって地球に向かって加速した。人々は滅びを悟ったが、その星は大気圏突入前に急減速。摩擦による熱もまるで吸収しているかのように、それは欠けることなくゆっくりと太平洋の真ん中に『着水』した。”


「3,2,1…突入!」


「…どういうことだ。」


「何もないぞ?」


「この先は崖だな…行き止まりか。」


“前例のない現象に、各国は即座に研究を開始した。他国に負けじと、研究員を次々と送り込んだものの、どの国の研究員も、研究成果を報告することなく消息を絶った。”


「いや待て、崖の…下だ…。」


「嘘だろ…?」


「グゥゥアァァァァァァ!!!」


「!?」


“異変を感じ始めた時にはもう、侵略は始まっていた。太平洋に面した各国で、人型の――しかし顔はなく、肌の色も様々な――奇妙な生物が発見された。その生物は人類を排除し徐々に領地を拡大していった。”


「総員散開!!リン!サヤカ!二人で抑えられるか?」


「了解。」


「了解、っと。サヤカ、援護頼んだ!」


「射線は塞ぐなよ。」


“人類はこれを「エイリアン」とし、軍隊を配備して対処しようとした。幸い、銃や刀剣などの地球上の兵器は一定の効果が見られた。しかし、無尽蔵ともいえる相手の戦力に前線は押し込まれ、やむを得ず日本とオセアニア各国の放棄を決定。なおも劣勢は続き、各国首脳らが頭を抱えていたところに、1つの希望が届けられた。”


「フラン隊長、私が下に降りてあれを叩きます。」


「ダメだ。」


「どうしてですか!もう勝利はそこにあるんですよ?」


「この島は何が起きるかわからない。わからない以上、部下を一人で送り込むことはできない。」


「私は名もなき一兵卒です!その命一つで勝てるのなら、安いものでしょう!?」


「馬鹿者!」


「…!」


“『対エイリアン用機動装甲』。強固な装甲を持ちながら、機動力に優れ、生身では扱えないような大型の武器も扱うことができる。この発明は盤面を大きく変えた。エイリアンを押し返し、日本、オセアニアを奪還。そして…『星』へと上陸し、決着をつけようとしていた。”


「…それに、いつも言っているだろう?とどめは…」


「2回刺せ、ですか。」


「わかってるじゃないか。…私が先に行く。お前は後から、確実に2回目を刺せ。」


「でも、それじゃあ!!」


「隊長!リベラ!早くしてくれ!」


「こっちも、残弾が少ない。押し切られるぞ。」


“人類は優勢と判断し、一気に決着をつけるため、侵攻作戦を決行。機動装甲での戦果が一定以上のメンバーのみで部隊を編成。その部隊の中でも、群を抜いて戦果を挙げていたのが決戦を任されたエース小隊の隊長、フラン・タクトである。”


「さあ、リベラ。頼んだぞ。ここで主戦力を失えばどちらにせよ勝ち目はなくなる。確実にな。」


「ダメです!私が…」


「ぐあっ!!!」


「リン!大丈夫か!」


「なかなかの貰った、けど、大丈夫だ。それより、リベラ!まだか!」


「…隊長!私はもう行きま…え?」




「フラン…隊長…?」


“人類はその日、勝利と引き換えに英雄を失った。”




“私の、弱さのせいで。”




決戦の日から約5か月。エイリアンの脅威は去り、各国の復興も少しずつ進んでいた。


『次のニュースです。本日、対エイリアン戦線派遣隊員及び決戦部隊員への勲章伝達式が執り行われます。勲章の授与は代表して第35小隊のフラン・タクト小隊長、リベラ…』


ラジオの電源を叩きつける。


「フラン隊長は、もういない。」


勲章伝達式に出る気など少しも起きない。しかし、不在のフラン隊長の分も代理でリベラが受け取ることになっている以上、参加せざるを得なかった。


「そろそろお時間です。」


「ええ。今行きます。」


今一度身だしなみを確認し、控室を後にした。




係員に誘導され、自分の席にたどり着いたところで、リベラは驚愕した。


「嘘…ですよね…?」


隣の席にかけていた人物は、治療の跡が目立つものの、それは間違いなくフラン・タクトだった。


「久しいな。元気だったか?いや、それより…」


「はい?」


「早く座ったらどうだ?」


「!、失礼しました!」


慌てて席に着くと、リンとサヤカもやってきた。そして、リベラの隣に座る人物を見て驚愕し、同じように席に着くよう促された。




伝達式は順調に進み代表者スピーチが始まった。本来はこれもフランの代役をリベラが務めるはずだったが、本人が話すことになった。




救世の英雄が放つ言葉を全世界が待ちわびた。それは間接的な勝利宣言になるからだ。


しかし、英雄の一言は人類を再び恐怖へ陥れた。


「エイリアンは、あの星は、まだ生きています。」

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