Penguins D??????? Project!!!

鮪糸(つないと)

第一回企画会議

ピンチ だとしても ペンギンたちは

茨城県某所 ジャパリプロ(仮)日本支社。


「新人君!長らく忘れてたけどやるよ!新人研修!!」


それは唐突で、かつ遅すぎる提案だった。


「研修…ですか?いくらなんでも遅すぎるんじゃ…」


「遅すぎる?それが殴り込んできた割に世に出せるモノを何一つ作れなかった人の言うことかい?」


「うっ、それは…」


PPPのプロデューサーになりたい。

新人がジャイアントペンギンの元に志願してから既に半年以上が経過している。

にも関わらず、彼は何一つ成果を出せずにいた。


「今までは私も君がある程度できると思って口出ししてなかったけど、これからはどんどん口を出していくからね。」


「ああ、僕としてもその方が助かります。」


「じゃ、これ最初の課題ね。」


差し出されたのは一部の企画書だった。


「えっ、なんですかこれ。企画書?PDP#1…って、研修じゃないんですか?」


「研修だよ?」


「PDPって本来看板にする企画ですよね?」


「そうだけど?…ああ、君の言いたいことは分かったよ。そうだなあ、はっきり言うなら、このジャパリプロはそのPDPと一緒に『心中』するつもりなんだ。」


「心中!?」


「日本じゃ、確かにアイドル文化は根付いてるけど、その分活動するには色々と制約が多いのは君にも分かるだろう?」


「ええ。まあ。」


パークであれば、ライブなども個人で、それもかなりの自由度で行うことができる。しかし、日本で同じような計画でライブをしようとすれば、アイドルとしてかなりの地位を築きあげた上で、金銭的な余裕も必要になる。当初はそれでも駆け上がるつもりだったが、半年以上鳴かず飛ばずの事務所では逆転のための一手すら打つことが厳しいというのが現実である。


「それに、この国のアイドル文化はかなり多様化しているからね。…彼女たちは普通のヒトじゃない。でもそれは『キャラクター』とか『方向性』という形でしか受け入れてもらえないんだ。」


「それは…確かに、知らない人からしたらそう考えてしまうと思います。」


「だから、これがラストチャンス。このPDPがダメなら、私たちは日本進出を諦める。…聞けば、日本には『ローカルアイドル』っていうのもあるんだってね。私たちは、それでも良いのかもしれない。パークに来た人だけが見れる、ローカルアイドルで。」


「…っ!!」


窓から外を眺めるジャイアントペンギンの背中はとても弱々しく、それがさらに悔しさに拍車をかける。


「…させません。」


「?」


「そうは…そうはさせません!!」


拳を強く握りしめる。


「この企画の詳細を教えてください、先輩。」





「時間が惜しい。簡潔に説明するよ。企画書の3ページを見て。」




題目

「Alien's cell」


主演

ジェーン


出演

コウテイ

イワビー

フルル

プリンセス




「これは…映画、ですか?」


「そう。アイドル単騎じゃなくて、いろんな方向で攻めていこうと思ってね。どうせ最後になるかもしれないなら、大きくいった方が良いでしょ?」


「そうですね。」


「それで、次のページが必須条件でありながら、研修的な要素のところだよ。」




テーマ

SF、ロボット


必須条件

PPP(特にジェーン)の優れた水泳能力をアピールするシーンをいれること。




「なるほど…。」


「君には研修として、このテーマや条件に沿ってこの映画を作り上げて欲しい。」


「さらに企画としては、ヒトでは考えられないような能力を誇示することで、更なる活躍の場を模索するってことですね!!」


「そういうこと!」


「スケジュールはかなりタイトですね…。」


「私だってタダでパークに帰るつもりはないからね。全力でサポートするよ!!」





帰り道。

冬目前の風はとても冷たく、議論で働かせた頭をあっという間に冷やしてくれた。


今回の企画、難しいのは脚本なども自分たちで行わなければならないという点である。

決められた制約のなかでできることを考えているうちに、とあることに気がついた。


「これ、プロデュースってか、ディレクションじゃね…?」


プロデュースがしたいと言ったはずだが、今は先輩が決めた方針に対してそれに沿うような構成を考えている。


この場合、プロデュースしているのは先輩であって自分がしているのはディレクションではないのか。


考え始めると、今までしてきた仕事に対しても疑問が浮かんできた。


「…。」


立ち止まり、電話をかける。


「…。あ、もしもし?先輩ですか?」


『あー、新人君、どうした?』


「PDPのことなんですけど、出演者って増やせます?」


『増やせないことはないけど…、できれば他所にオファーとかはやめて欲しいかな。あくまで自主制作になるわけだし。何より経済的に…』


「あ、心配しないでください。出てもらうの、先輩なんで。」


『…え?』


PDP#1 期限まであと、16日(11月28日現在)。











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