第1話[加害者]
「華ちゃん、もう気にしないで。」
「さっきも言ったけど、仕方ないんだよ。」
「従わなきゃ、イジメられてた。」
「だからもう、気にしないで、ねっ。」
私は静香の優しさに甘える事にした。
私は弱い人間だから。
その日から、学校帰りに静香の家へ寄るのが日課になった。
静香と一緒は楽しい。
そう思い、過ごしてきたのだが…。
「えっ…、今なんて…。」
「だからぁ、静香の家に行って、悪口言って来いって言ってんの。」
「それで、静香の泣き顔を笑いながらスマホで撮影してこいよ。」
「持ってんだろ?」
「スマホ。」
まただ。
私は静香を傷つけようとしている。
静香の言葉が脳裏に過ぎる。
仕方ない。
そうよ、仕方ないんだ。
こんな複数人に囲まれ、脅されれば、誰だって従うしか…。
従うしか…。
「できない…です…。」
体が震えている。
それでも、私は自分自身を褒めてあげたい。
勇気を出せたんだ。
ハルに立ち向かう事が出来たんだ。
「そっか、立場分からせないといけないかぁ。」
ハルはクラスメイトの女子達に指示を出す。
自分の手は汚さない。
これが、ハルの手口だ。
私は羽交い締めにされ、ゴキブリを見せられる。
「華ちゃんも昆虫食、楽しみまちょうねぇ〜。」
ご機嫌そうなハル。
女子生徒は私にゴキブリを近づけてきた。
数センチの所で止め、ハルが私にチャンスを与えた。
「静香の泣き顔を撮影してくるか?」
「だったら、助けてやんよ。」
私の答えは変わらない。
何があっても絶対に。
その事をハルに伝えると、ハルは舌打ちをし、女子生徒に「やれ」と命じた。
私は目を閉じて、顔を背ける。
何とか逃げようと、体を揺らしたりした。
するとそのお陰か、羽交い締めから解放される。
安堵し、目を開けると、そこには…。
「えっ、どうなってるの?」
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