間違い告白から始まる、嘘だらけの恋人関係

焼野原ひろし

第1話 告白

「こんなところに呼び出してごめんなさい。カズくん。」


 俺の名前は青山和馬。公立見鷺高校に通う平々凡々な1年生だ。


 唐突だが、俺は今人生初となる告白を受けている。

 下駄箱にラブレターが入っていたときは驚いたが、俺を呼び出した彼女を見てさらに驚いた。


 北条ユリア


 北欧系のハーフであり、銀髪碧眼透き通った白い肌はまるで物語の妖精が現実に現れたかのような印象を受ける。

 学年一の美少女とも名高い女子からの呼び出しであったからだ。


 彼女の人気はすさまじいものであり、入学してからの2週間で告白された回数は2桁を超え、ファンクラブまでできているという噂すらある。


 しかし和馬は美少女から呼び出された緊張とは違う理由で、背筋にかいた汗が止まらなかった。


 そんな俺の心情を知ってか知らずか、北条は白い顔を真っ赤に染めて話を続けた。


「でもひどいですよ。せっかく同じ高校になったのに2週間一度も声をかけてくれなかったから、八年ぶりで私のこと忘れちゃったのかな?って心配してたんですよ。」

「…。」


 北条はこの2週間、俺に声をかけてもらえるのを待っていたのか。

 クラスも違うし、話しかける切っ掛けなんてなかったわけだが…。


「でも、下駄箱に入れたラブレターの文章読んでここに来てくれたってことは、やっぱり私のこと覚えててくれたんですよね。」

「…。」


 そう、俺はラブレターの文章を読んだうえでここに来ている。


「私、カズくんに再会できたらずっと言おうと思っていたことがあるんです。」


 そういうと彼女は胸の前でぎゅっと祈るように手を合わせ、元々真っ赤だった顔をさらに赤く染めた。


「この八年間ずっとカズくんとまた会えるのを待っていました。」


 北条は八年分の想いを、愛の告白という形で俺にぶつけるのだろう。

 これだけの美少女に本気で思いを伝えられて、断れる人間などいるのだろうか。


「見た目が他の人と違うせいで、いじめられていた私を助けてくれたこと。日本語が分からなくて上手く話せない私につきっきりで日本語を教えてくれたこと。」


 だが、俺はこの告白を断らなければならない。なぜなら...。


「そんなカズくんのことが…大好きです。どうか付き合ってくれませんか。」


(北条さん…。その「カズくん」俺じゃないです…。)


 そもそも告白する相手を間違えているのだから。

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