世界掌握系ハッカーの逃亡。あるいは攻撃。

夕日ゆうや

第1話 ハッカーと捜査官。

 様々なものをネットワークでつなぐ――Iotが当たり前になった世界で、人類は新たな問題に直面しているのであった。

 料理などのほぼすべてが自動化オートになった世界で、彼らは今日も生き抜くのであった。


「ほう。NBCが太平洋安全保障条約に加盟、か……」

 モニターが六つと、自作のパソコンが二台。ウィィィィンとファンが音を立てて空気を取り込む。

 部屋は六畳ほどの広さがあり、エアコンにての冷暖房を完備している。ゴミやカップ麺の残りがそのまま放置されている。

 ネットの海には多くの情報が流れている。そのどれもが正しいとは言えないが、この裏情報にはちゃんとした裏付けもある。

 明日の午後にはニュース速報になるだろう。となれば、ここジオパンクにも影響を及ぼすだろう。

 加盟国にはアメリナやノーストーチといった国々が参加している。

 NBCは核保有国であり、過激派としても知られている。……と言ってもそれを信じているのは裏の住民だけだ。

「さてと。どのマスコミにリークするか……」

 それで稼ぎになるのだから、儲けもんだ。

「一番、高く飛びつくのはどこだ?」

 それぞれの資産価値を調べ一番高く買ってくれそうなAACに売り込む。

 匿名メールで知らせると、二十万という価値で買ってくれた。

「へへ。これで暮らしていける」

 銀行の裏口座に入金されたのを確認し、生活の足しにする。

「ん?」

 新着メールがスマホに入る。

『やっほー。生きているかい? 鳴瀬なるせくん』

「へ。生きているさ。一ノいちのせ

 どうしたんだ? と打ち込むと、返信を待つ。

 俺たちはネットを通じてデータを引き抜き、その情報を売り込むことで利益を得ている。つまりはハッカーだ。

 それもかなり危険な橋を渡っている。他国の国防省にアクセスしているのだ。

『どでかいニュースが入ってきたようだな』

「それをどこで?」

 おかしい。IPアドレスの偽装に問題はない。情報をリークしたのに気がつくようなデータは見当たらない。それに情報を引っ張り上げるような痕跡もない。

(どうしてそれを知っている)

『予測演算だ。先に見つけたデータだからな』

 メールでやりとりを始めると、納得できてしまう応えが帰ってくる。

(……なるほど。つまり、俺の動きを理解しているわけだ)

『そうだね。かなりの確立でキミの動きを把握できているかな』

 となれば、こちらの情報よりも先にデータを収集しているはずだ。

『どうかな? 今度、大きな会談がある。その情報を先にリークした方が勝ち』

(ほう。面白いな)

『負けた方が、勝った方の言うことをなんでも聞くなんてどうだろうか?』

(なるほど。それでいい。こちらも全力で望むぞ)

『ふっ。いいぞ』

 一ノ瀬春海はるみはデータを盗むだけでは飽き足らず、そのデータを改竄してしまうブラックハッカーだ。クラッキングとも言うが、そういった類いの行いをする悪趣味さがある。

 そして最近ではあまり力を入れていなかったハッキングに発破をかけるようなメール文。

 俺が最近、ネットから離れていたのを知っているのだ。

 もしかしたら、パソコンをハッキングされているのかもしれない恐怖心を隠してネットの海を徘徊する。

 今度の会談は二週間後の世界国家軍設立案件――通称WNAEMだ。そこに向けて色々と調べておきたいことがある。

 まずはどの官僚が関わっているか。それに官僚の付き人。それを調べるまでに二日もない。

 水と食パンだけの生活をし、すぐにでも調べ始める。

 みなもとと、その周辺の情報を引き出す。

 確かノースアーチの情報局にも似たようなデータバンクがあった気がする。

 そこから先は早く進むもんだ。

 データを一喝管理している情報局・IISのネットにハッキングを試みるのだ。その片方でIPアドレスやアクセスの改竄を行う。

 ステータスに異常はない。最新データをダウンロード完了。これよりパスワードの再設定を解除する。

 しかし、少しくらい息抜きをしてもいいだろう。

 俺は外にでると、学校へと向かう。

 俺はまだ高校生なのだ。

 負ける訳には行かない。

 そう決意し、傘を持って出かける。


※※※


 雨が降り続くオフィス街。

 都庁のとある一室。

 書類のたまったデスクで、おれは一人でたたずんでいた。隣にいた部下を率いてデータを処理している。

「こいつはどういうことだ? なんで既存のシステムが動いているのだ?」

 おれの発言に部下の佐倉さくら瀬利せりが慌ててデータをモニターに表示させる。

「これだ。これ」

大久保おおくぼさん。これはデータを管理しているだけのAIっよ」

「それは分かっているが、データを入力しているのは早坂はやさかさんですよ」

「ならいいんだが……」

 早坂は過去の事件を洗っている捜査官だ。主に殺人事件のデータを調べているのだ。ここは都庁の中でも屈指の実力者を集めている捜査本部だ。

 とはいえ、普通の警察とは違う特別チームとして設立している。

 その捜査は多岐にわたり、殺人から盗撮、ハッキング、不正アクセスなどなど。様々な要件を調べている。

 集めたデータは一括管理している他、データから凶悪犯罪者の再犯率などを調べている。

「それよりも、ハッカーの仲間を探しませんか?」

「ああ。そうだな」

 おれはそう頷くと、早速データの洗い出しにはいる。

 最近、他国の情報をマスコミに売っている者がいると聞く。裏では国際問題に発展しており、こうして捜査本部への依頼がきているのだ。

「ハッキング、ハッカーね……」

 おれが思うに、こいつは賢いがバカだ。

 かなり優先度の高い情報をマスコミに売るくらいしか考えていない。その気になれば、国家を揺るがしかねない情報でも売りに出しているのだ。名を〝ハウンド〟と呼称している。

 どんなサーバーからも、データを吸い出せると噂されているのだ。サーバーのパスワードにも影響を及ぼした痕跡はない。

 どこにも痕跡を残していないとなると、ハウンドの尻尾すらつかめていないのだ。

 そりゃ焦る。

 だが、結果だけは出ている。今も、速報で『NBCが太平洋安全保障条約に加盟』とテロップが流れている。

 この機密情報を得た政府は大慌てで調べ始めている。

「また動いたな」

「ええ。そうっす」

 佐倉が早速データを集め出す。

 データはNBCにある外務省をハッキングした模様だ。それも高度に偽装されており、流失したデータすら解読できていないようだが。

 正規の方法で得た情報だと、明日に公開を表明する予定だったらしい。

「それにしてもマスコミもよく信じたな」

「そこが問題なんっす。こいつの手口は巧妙で、プリンタを使って送っているらしいっす」

「プリンタの履歴からは分からないのか?」

「それがパソコンに直接書き込んでいるらしいっす」

「どうやって?」

「それが不正にアクセスされているみたいなのですが、マスコミにとっては有益な情報を売り買いするのは珍しくないですから」

「見過ごされているわけか……」

「はい。そうっす」

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