BAR ブルーライツ
阿佐ヶ谷ピエロ
BAR ブルーライツ
梅雨に入って、一週間がたった。相変わらずこの中野という街には、いろんな人達が歩いている。ここ最近の大学の誘致に、大手企業の本社移転など、中野バブルと言っていいだろう。
俺の名前は、田嶋亮。みんなリョウとか、リョウさん、とか言ってくれる。
北口から、まっすぐ商店街を進みオタクの聖地「中野ブロードウェイ」を抜け、早稲田通りも越えて、更に住宅街に入る寸前に、俺が営んでいるbar 「 ブルーライツ」はある。
客席は、わずか8席、お気に入りは、30年かけて少しずつ集めたjazz のレコードとJBL のスピーカーぐらいだ。店の名前の由来はjazz 好きならわかるだろうが、俺の最も尊敬するギタリスト、ケニーバレルの名盤からとったものだ。ちなみに、いつの間にか居座ってしまった、野良猫の名前は、そのまんま、バレル。
店のオープンは、午後7時から深夜3時ぐらい。まあ、こんな街だ、人間も様々、いろんな過去を背負って生きている。
今、俺の右斜めに座って、ジャックダニエルのソーダ割りを飲んでるのが、駅前で貴金属の買い取り会社を経営している、岡野五郎。
今日は、取引が少なかったのか、えらい静かに飲んでるが、いつもは、隣に愛人を座らせて、自慢話のオンパレードさ。しかし、どこか憎めないやつで、俺は、このような生き方も、悪くないと思っている。そして、左側の隅で、麦焼酎のキープボトルを、後生大事に抱えてながら飲んでるやつが、須藤真。まったくJazz には興味がないといいながら、結局10年の付き合いになる。人は、やっぱり分からない。とにかく、俺は気取ってるやつが、大嫌いなんだ。自分に正直に生きているやつが、好きなのかもしれない。
とにかく、この街にたどり着いて10年、その前の事は、今は話したくない。とにかく、今の俺を受け入れてくれた、この街を、俺は密かに愛している。
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