17日目 朝 防衛大臣と優しい妻

ーー世界が終わりまであと54日



楽しい夕食時が終わり、次の日を迎えた。「じゃあお父さんの話を続きをしようか」「お願いします、夕神さん」「君のお父さんは重い病気で亡くなったんじゃない、殺されたのだよ…」「え…?殺された…?」「そう、殺されたのさ…」夕神の口から、ついに明かされる父の死の真実。




また話は20年前に遡る…




国際警察と話した日の夜、彼は妻が待っている家に久々に帰るとこだった。「夕神さん、わざわざ家の方まで送ってくださりありがとうございます」「いえいえ、こちらの方こそ長い話に付き合っていただきありがとうございます」「また何かあったら、連絡お願いします」「分かりました、一応大臣の方からも送れるようにしましたので、何かあったら大臣からもお願いします」「了解です、では…」そういって彼は、家の方に歩いて行った。





「ただいま明香里、帰ってきたよー」「おかえりなさい、あなた!」(希島 明香里 当時28歳)彼女は夫が久々に帰宅し、嬉しい声をあげていた。「ごめんね?なかなか帰ってこれなくて」「仕方ないわよ、大臣の仕事なんて大変だろうし…」「まだ慣れていないこともあるけど、色々な人がサポートしてくれているからさ」「そうなんだ、どんな人なの?」「秘書の御木さんとか…あとは、こくさ……」(彼は夕神から国際警察の存在は、どんな信頼のある人にでも言ってはいけないと言われたのを思い出した)「こくさって何…?」「あ、いや…コックさん!コックさんがいるんだよ!」「コックさん…?」「そうそう!美味しい料理を作ってくれる専属のコックさんがいてさ、その人が作るハンバーグが美味しくてさ!」彼はとっさに変な誤魔化し方をしてしまった。「その人の方が料理上手なの?なんか嫌だなぁ…」「いやいや…その人のハンバーグ食べていたらさ、明香里の作る美味しいハンバーグが食べたくなっちゃって」「もしかして、それで帰ってきたの?」「ハンバーグも食べたいし、明香里と話をしたかったのもあるけど…」「あるけど…?」「それは後でゆっくり話すよ!それより急に帰ってきちゃったけど、ご飯とか作ってもらってもいいかな…?」「もちろんよ!ちょうどハンバーグの材料を買ってきたから作ってあげる!」「それは良かった!連絡もしてないのにありがとうね?」「いーえ、気にしなくて大丈夫よ!」彼女は笑顔で食事の支度を始めた。




「出来たよ!特製デミグラスハンバーグ!」「ありがとう!久々に明香里の手料理が食べられるよ」「楽しみにしてくれたなら良かった!じゃあ一緒に食べましょうか!」「いただきます!」この日、二人に久々の夫婦での食事の時間が訪れた。「それで仕事の方はどうなの?」「んー…ひとまず順調かな?防衛大臣以前に大臣の仕事自体、経験が無いから慣れないのもあるけど…」「それは仕方のない事よ、慣れないことを今すぐ順調にやるなんて」「そうだよね、ひとまず失敗を少なくするように頑張るよ」「そう、焦らず順調にね?」「明香里の方は一人で寂しくないかい?」「寂しくないって言ったら嘘になるけど、あなたがテレビとかで大臣として活躍する姿を見てるだけでも安心するから大丈夫よ」「そうだよな、仕事が無い時や休みが取れる時はなるべく家に帰るからね?」「うん!そうしてくれると嬉しいわ」二人は食事を楽しみながら、お互いの近況を報告し合った。「それでさ、急なんだけど明香里に渡したい物があるんだ」「あら、何かしら?」「これをあげようと思ってね」彼はそう言うとケースを取り出し、彼女に渡した。「え?何かしら、開けてもいい?」「いいよ、開けてみて?」彼女がケースを開けると、そこには綺麗な宝石の付いた指輪が入っていた。「これって指輪じゃない!もしかして買ったの?」「ううん、買ったわけじゃ無いけど作ってもらったの、世界に一個しかない指輪を」「すっごく綺麗…ありがとう大事にするね?」「喜んでもらえて良かったよ、失くさないよう大事にしてね?」「失くしたりしないよ、ずっと大事にする」二人の束の間の楽しいひとときは終わり、久々に二人の時間を楽しんだ。こうして夜は明け、彼はまた仕事の為に国会に向かったのだ。NWという巨大な組織と戦う為に…。





ーー彼が亡くなるまであと2年

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